センニチソウ | ナノ

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『はぁ…ユリウス冷たい』






私は今日、回っていない遊園地に二人で行くつもりだった。だからユリウスも誘ったのに…。ユリウスは一人で行って来いだって。遊園地に一人で行く少女が何処にいるんだ。いや、現在進行系でいるんだけども。ユリウスもずっと塔にこもってるし、いつかキノコが生えてしまうよ。






『どうにかして外に出そう』






そうだ、喫茶店とか。ちょい待て、いい店知らないよ私。でもコーヒーが好きだし、紅茶とか沢山あるとこに行けばいいかもしれない。あ、遊園地でもいいな。って今日断られてるんだった。でも、どうにかしてユリウスを外に出さないと。あれでもないこれでもないと考えていると、どうやらあっという間に遊園地に着いたらしい。目の前には、遠くからでも分かる観覧車。楽しい音楽に賑わう人々の声。叫び声とか泣き声とか笑い声とか(ん?泣き声?)それにしても久しぶりだなあ、遊園地なんて。






「ようこそ遊園地へ!!」

『えっと…あ、後から一人来るんで!中での待ち合わせなんですけど…』

「かしこまりましたー!!では中へどうぞ!思いっきり楽しんでくださいねっ」

『ありがとうございます(よっし上手くごまかせた…!)』






賑わう遊園地に私も溶け込む。ジェットコースターにコーヒーカップ。メジャーな物から見たこともないような乗り物まで沢山の物があった。すごいなー。この世界って実は天国の真隣だったりして。






『なーんて、有り得ないか』

「おじょーさん」

『!?……?…?』

「そんなビックリすんなよな!アンタ、どっから来たの?」

『何処っ、て…えっと……』






いきなり現れたのは、猫耳と尻尾を付けたパンクな少年。すっごい露出…。






「俺はチェシャ猫のボリスだ」

『チェシャ…猫(だから耳と尻尾が付いてるのか)』

「アンタは?」

『あ、名前です』

「名前ね!アンタ、見たところ一人だしさ、俺と一緒に回らない?」

『え、いいの?』

「もちろんだぜ。俺は遊園地に住んでるから何でも知ってるしな」






遊園地に住んでるなんて聞いたことないよ。まあ、こんな世界がある時点で私の常識もひっくり返されるのだけれど。それ以前に、私が一人だってことに気付かれたのがすごく恥ずかしい。彼氏待ってるとか思わなかったのかな…。






「智己はなんでも大丈夫か?乗り物酔いとかしない?」

『大丈夫です』

「そっか。ていうか敬語やめようぜ。俺のことはボリスな!」

『…うん。ありがとう』






此処の人達はいい人ばかりだ。そう思ったら勝手に頬が緩んで、ふにゃりと笑ってしまう。少し驚いたボリスは、その後ニカッと笑って「おう!」と言った。






「じゃあ、先ずあれから乗ろうぜ!」

『……え?』






何でしょう…。あの…、この世の物とは思えない、クニャクニャのジェットコースターは。










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