センニチソウ | ナノ

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「お姉さんもう帰っちゃうのー?」

『うん』

「もっとゆっくりして行けばいいのに。時計屋と一緒なんて、あんたつまんねぇだろ?」

『つまらなくはないかな(一番まともに接触できるし)』

「お嬢さんが言うなら止めないが…。何かあったら屋敷に来るといい。最高の紅茶を用意しよう」

『ありがとう』

「エリオット、名前を時計塔まで送ってやりなさい。本当は私が送ってやりたいのだが…、仕事が山々でね」






必要な買い物を済ませた私は、時計塔に帰るところだった。帰ると言ったらディーとダムが離してくれなかったけど、ブラッドが注意して離してもらった。ブラッドの送れという一言に、ひとつ返事で返したエリオット。悪いなと思いながら少し嬉しかった。屋敷から時計塔までよく分からないし。






『今日はありがとう』

「いや、楽しんでもらえて光栄だよ。またいつでも来るといい。お嬢さんなら大歓迎だよ」

『ありがとう。じゃあ、また今度』

「バイバイお姉さん!」

「また来てね!絶対だよ」

『うん。またね、二人とも』






二人の頭を撫でて、荷物を持ち直す。私はエリオットと一緒に、暗い森の中に進んだ。






「名前、荷物貸しな」

『わっ……あ、ありがとう』

「いいって。にんじんケーキうまいって言ってくれたし。俺、あんたのこと気に入ったぜ!」

『はは、ありがとう』






歩く中、エリオットはずっとにんじん料理のことを話していた。途中からブラッドの話だったけどね。本当にブラッドのことが好きなんだろうな。私も帰ったら…………帰っ、たら…?






『……あれ?私…いつ帰れるの?』

「あんたが帰るのは時計塔だから今じゃねぇのか?」

『いや、そっちじゃなくて…』

「道間違えてたか?」

『違うよお馬鹿』






今…というか、薄々気付いてはいたけど天然馬鹿なんだね。うん、素直でいいと思うよ。






『私が帰りたいのは…っ!』

「名前?…名前!?おい、大丈夫かよ!どっか痛いのか!?」

『っ……』






―――忘れなさい






そう頭の中に響いた。思考が操られるように、私はその言葉を素直に聞いてしまう。頭がふっと軽くなって、痛みはなくなった。






『あれ…』

「名前?大丈夫か?」

『う、ん。ごめんエリオット』






心配そうに耳を垂らすエリオットに、申し訳ないという気持ちと、表情豊かなところに少し微笑む。それにしても、何を考えていたんだろうか。






「お、もうすぐだぜ」

『本当?ありがとうエリオット。また今度お礼するよ』

「そんなのいいぜ。…あ。なら、今度俺に付き合ってくれよ」

『どこに?』

「にんじん料理の新しい店ができたんだけどよ、ブラッドは来てくれねーし…。その…あんたさえ良ければだけど」






頬を赤くして問いてくるエリオットに、また笑みがこぼれた。






『もちろん』

「本当か!?サンキュー!あんたって本当いい奴だなっ。そん時になったら迎えに来るよ。じゃあな!」

『うん、ありがとう』






エリオットが満面の笑みで手を振る。それに振り返しながら、エリオットの姿が見えなくなったところで塔に入った。帰った時、ユリウスが何か言いたそうだったけど、結局言わず仕舞い。何だろうと思いながら、私も聞かなかった。










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