センニチソウ | ナノ

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「どうぞ、」

『あ、ありがとうございます』






使用人だろうか。その人が私の前に紅茶を出してくれた。今はブラッドさんという方の自室かオフィス。さっきの双子もいて、何故か私の両隣に座っている。あの…なんの拷問でしょうか。






「ディー、ダム。お嬢さんが怖がっている。離れなさい」

「えー」

「お姉さんごめんね!もうあんなことしないから」

「うん、しないよ!お姉さんのこと気に入ったからね」

『あはは、それはどうも…』






げっそりして言う私に、ブラッドさんはくすっと笑い、双子はべったりくっついてくる。そこに、扉が勢いよく開いた。






「ブラッド!また門番共がサボってやがっ、た?」

「ヒヨコうさぎだ」

「うるさいよヒヨコ。僕等はちゃんと働いてたもん!」

「お前らいい加減に…!」

「エリオット、やめろ」

「ブラッド…!」

「見て分からないのか、客人だ」

「っ…わりぃ」

「分かればいいんだ。…すまないお嬢さん。こいつはエリオットだ。こんなでも実力No.2でな」

「こんなってなんだよブラッド…」






見れば体格のいい青年。その体格には似合わない兎耳が付いていた。ペーターの親戚…?そんなことを思っていたら、コツコツと近付いて来るエリオットさん。






「すまねぇな…」

『いえ。急に来た私も悪いですし、全然気にしてないですよ』






ちゃんと謝れる人は、いい人だって決まってる。この人はいい人だ。なんて思ったら、自然と頬が緩んだ。






「あんたっていい奴だな…!俺はエリオット=マーチ、よろしくな!えっと…」

『名前です。こちらこそ、よろしくお願いします』

「名前な!」






ニカッと笑うエリオットさんは、なんだか可愛かった。ユリウスにはマフィアだって聞いてたけど、そんなに怖くなさそう。確かに、双子はまだちょっと怖いけど…もうしないって言ってるし、現にブラッドさんはマフィアのボスだけど優しい。いい人の集まりなんだと思った。






「ところでお嬢さん。迷っていたようだが、何処に行こうとしていたんだい?」

『街に出掛けようと…。でも、道が全く分からなくて…』

「君は余所物だからな。この地のことが分からないのは当然だ」

「へー、あんた余所物なんだ!初めて見たぜ!」

「ダメだよ!お姉さんを口説こうなんて思ったら」

「なっ!思ってねーよ!」






私から離れた双子とエリオットさんの喧嘩が少し微笑ましかった。笑っていたらブラッドさんが立ち上がり、私の前にしゃがみ込む。






「もしよかったら、私に案内させてもらえないか?」

『え?』

「ボス!勝手に口説かないでよ!」

「抜け駆けなんて絶対ダメー!」

「お前らは黙れ!」

「「いたっ」」






慣れない扱いに戸惑っていると、ブラッドさんがす、と私の左手を取った。何をするのか分からなかった私は、頭に疑問符を浮かべていた。ちゅっというリップ音が聞こえて、手の甲に感触があった時には、急ピッチで顔が熱くなった。






「おやおや…。こんなことで顔を赤くするなんて、可愛いお嬢さんだ」

『あ、分かった。からかってますね』

「くす…今はそうゆうことにしよう。エリオット、」

「なんだブラッド?」

「出掛ける準備だ。お嬢さんに街を案内しよう」






チラっと私を見たブラッドは、ニヒルだけど、綺麗に笑っていた。










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