センニチソウ | ナノ

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これは何処に向かっているんだろうか。街に出ると言って来たけど、街が何処にあるかすら分からないのによく言えたものだ。






『うわー、私って馬鹿なの?』






とりあえず、ここを真っ直ぐ行ってみよう。そうして出た所には、塔から見えた大きな屋敷があった。大きな門に大きな屋敷。少し庭が見えるあたり、本当に豪邸なんだろうな。あ、屋敷の人に聞いてみればいいよ。街はどこですかって。そう考えた私は、小走りで門の近くに寄ってみた。すると、遠目からは見えなかったけど、男の子が二人。丁度良かった。子供ならあちこち行くし、聞いたら分かるかも。






『すみません、』

「?…お姉さん誰?屋敷に用事?」

『いえ、道を聞こうと思って…』

「どうする兄弟」

「んー、人は見かけによらないからね」

「そうだね。新しい武器の切れ味も調べたいし…」

「丁度いいよね。安心してお姉さん」

『?』

「痛みも感じないくらい、早く殺してあげる」

『…げ』






斧を持った双子の少年。振り上げられてびゅん!と振り落とされた。避けれたものの、あと少し遅れていたら私は真っ二つだった。






「あーあ、避けられちゃったね兄弟」

「そうだね兄弟。お姉さんやるね。なら僕らともっと…」

『っ…!』

「「遊んでよっ!!」」

『ギャアアアアアアア!!ちょ、子供の遊びじゃない!ていうか遊ばない!それ以前に遊びじゃない!』

「あはは、お姉さんすごーい。女なんてすぐ死ぬのにね」

「ちょっと楽しいね。でも…」

『わっ!』






ツン、と何かにつまづいて、私は尻餅をついた。ペーターにやられたところがもっと痛む。生理的に涙が滲んで、双子を見上げる。いてて…これヒビとかいってないかな。






「楽しかったよお姉さん」

「また遊んでよね」

『…!』






斧がまた振り上げられる。あまりにも怖くて体が動かなくなり、目をつむった。





―ガツンッ!!






「門番…、屋敷内で殺す時は、私の許可を取れと言っただろう」

「ボスだー」

「僕等は仕事をしただけだよ」

「だからとむやみに殺すな」






来ると思った衝撃が来なかったのは、長い帽子を被った人のおかげ。杖みたいなもので斧を押さえていた。






『…あり、がとう……ございます』

「どういたしましてお嬢さん。怪我はしてないかい?」

『してません』

「なら良かった」






ふ…と全身から力が抜ける。強張っていた体も、今ではだらんとなっている。はぁ、これじゃ街にも行けないな。聞ける雰囲気じゃないし…やっぱり怖い。






『…んんん……』

「?……お嬢さん、余所物だね」

『え?あ、はい。こっちではそう呼ぶらしくて…。名前です』

「ふむ。よく出来たお嬢さんだ。私はブラッド=デュプレ。この帽子屋屋敷の主だ」

「お姉さん余所物なの!」

「わーわー、初めて見た!」

『っ…』

「あまりお嬢さんを怖がらせるな。お嬢さん、見るところ困っているようだ。屋敷で少し話を聞こう」






腰が抜けて立つのも精一杯な私を、手を引いてエスコートしてくれた。そんなこんなで帽子屋屋敷、初訪問です。










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