『ぅう……。どこに行けばいいんだっけー』
アリスは迷います。先程、たくさんの花に囲まれ「アリスお帰り」なんて言われました。
アリスはそれが怖かったらしく、奇声を上げながら走り去ったのです。その為、この森で迷ってしまっていたのでした。
『あ、こっち行ってみよ』
好奇心旺盛なアリス。先程あったことなんて気にしません。ずんずん前へ進みます。いつの間にか辺りは霧に包まれ、景色が見えなくなりました。
アリスの足は止まり、くるっと周りながら景色を確認します。それでもやっぱり何も見えません。
『なんか暗いしなー。どうしよ』
アリスが考えていると、足に何かが触れた気がしました。それにビクッとなったアリスは、体を強張らせ、目をこらします。
『誰かいぃぃいいいいっ!?』
「クフフ、」
『骸!?ちょ、離れて!』
「それはお断りいたします」
『なんでだよおおおおっ』
アリスに後ろから抱きついたのはチェシャ猫でした。足に触れたのは彼のしっぽみたいです。彼が現れたと同時に霧もなくなり、辺りがしっかり見えていました。
「アリス、お帰り」
『いいから離せ』
「クフフ。相変わらず気が強い子ですね。ツンデレは僕も大好きですよ。ですが今は二人っきりなのでデレデレして下さい。本当は僕に会えて嬉しいのでしょう?僕には分かりますよ、アリスが何を思っているのか。さぁ、遠慮せず胸へ!」
『誰がいくかあああああっ』
アリスはそのナイスなキックでチェシャ猫を蹴り飛ばしました。アリスは好奇心なのです。暴力ではありません。
「体力、着きましたね……」
『防御です!』
「クフフ…、そんな貴方を愛してます、よ……」
『やーめーれ!』
ボロボロになりながらも尚キスを迫るチェシャ猫。
そろそろ目を覚ませチェシャ猫!お前には大事な役割があんだろーが!
あらら?天のお告げでしょうか。その声で「おや」っと声を漏らしたチェシャ猫は、またグイッとアリスを寄せました。
『セクハラだよ骸!』
「仕方がありませんよ。僕には余り時間がありませんから。アリス………」
『んな!?ち、近いっ』
「不本意ですが、君はこの道を真っ直ぐ行きなさい」
『この道を……?』
「そこで会うべき人に会うのです。…………不本意ですが。ついでに彼に言ってください。…………バカ、と」
『え……いや、うん。分かっ、た』
なんでだろうと思いながら、チェシャ猫が嫌う者を探りました。………………居すぎて見当もつかないのでした。
『じゃぁ、ありがとう』
「行ってらっしゃい」
『ん、行って来………!!』
「クフフ、どうしたんですか?顔が真っ赤ですよ」
『ななななななななな!!………っ!うっさいわああああああああ!!』
「おやおや…」
真っ赤になって走り去るアリスの背中を見つめるチェシャ猫であった。
上 END