『ゆーたー』
「悠太は今お風呂だけど?」
『祐希。そうなの?なら待ってよ』
「何?悠太に何か用事?」
『うん』
「……あー、分かった。チョコレートでしょ、名前ちゃん?」
『んな……。う、そうですけど…』
「悠太もやるねー。でも渡さないよ」
『別に祐希のじゃないでしょ!』
「俺らは相思相愛だから」
『ゆーうーきー?』
「きゃー、悠太助けてー」
『棒読みじゃないか!』
「どうしたの?」
『悠太…!?』
「助けてよー悠太。名前が俺のこといじめるー」
『いじめじゃないわあ!!』
「はいはい二人とも騒がない。近所迷惑だから」
『むむむむむ……』
「そういえば、悠太。名前が用事あるんだって」
『な!まだ……!』
「そうなの。何?」
『…えっ、と…』
「俺風呂入ろーっと」
「どーぞ」
『祐希……!』
祐希は悠太にばれないよう、「がんばって」と口パクで言ってきた。がんばれって言ったって…。
「で、何?数学で分からないところ?」
『いや、……(頑張れ。頑張れ自分!悠太なら受けとってくれるはず…!これが祐希ならあれだけど…悠太は…)』
わたしは決意して、バッと顔を上げる。すると悠太とばっちり目が合ってしまった。騒がしい心臓を落ち着かせ、深呼吸をして口を開いた。
『これ………!!』
「……?」
『悠太、別に甘いもの嫌いじゃなかったよね?うん、多分いいって言ってたよ。ちょっと形はいびつだけど味は普通だから、お願いだからまずいとか言わないで。お願いというか命令に近いですはい』
「命令なのに最後は敬語なんだね、しかも早口」
『とととととりあえず…!』
「ん、ありがとう」
『(ほっ……)』
「でもなんで急に?」
『えっ………!?』
「………なーんて、冗談だよ」
『っ………!』
下を向いていたら、悠太が顔を覗き込んできて、そのまま唇に優しい感触。長く、優しく、ゆっくりと、悠太はわたしにキスをした。その後の悠太は、心臓が止まるくらい、優しくわたしを見つめていた。そんなわたしは、多分真っ赤だ。
記念日になったバレンタイン