「名前!すまんがかくまってくれ!」
『……また追いかけられてるんですか?桂さんも変装くらいしたらどうです』
「ありのままでなければ意味がないのでな」
『隠れる意味もなくなるよ。で、今日はどうしてまた?』
「いや、バイトをしていたのだが見つかってな。……今日はバレンタインだろう?」
『バレンタインですよ。ていうか変装してくださいよ本当に』
「いやだからありのままでなければ『もう捨てなさいその考え』……ところで名前」
『はい?』
「俺にチョコはないのか?」
『なんでですか』
「やはり男子たるもの、好きな娘から貰いたいものだろう」
『………好き、なって…』
「何を言っておる。名前しかおらんだろう」
『いや……その、もう少し雰囲気とかなかったんですか?あまりにも急すぎてよく分からないじゃないですか』
「……の割には顔が赤いぞ」
『!!!』
桂さんがわたしの顎をくいっ、と持ち上げる。なんでこんなに手慣れてるんだ…!馬鹿のくせにっ。
「チョコがないなら…名前を貰おう」
『はっ!?ちょ……っ、桂さん!?』
「今日はバレンタインだ。男子の好きにさせるべきだろう?」
『世界が滅びるから!って、どこ触ってんですか!』
「そろそろ素直にならんか」
桂さんはわたしの両手に自分の両手を重ねると、そのまま優しくキスしてきた。……チョコあるのに……。まぁ、いっか。そう考えて、桂さんの背中に腕を回した。
チョコレートのないバレンタイン