『土方さーん』
「……名前、いつもノックして入れって言ってんだろうが」
『忘れてました』
「いい加減覚えろ。で、なんの用だ」
『うふふー。土方さん、ハッピーバレンタインです!』
「……は?」
『やだなー、今日はバレンタインデイですよ!女の子から男の子へキャッ!なイベントデイです』
「……俺に、か」
『はい!昨日いろんな人に作ったんですよー』
「…いろんな?」
『今は友チョコなんかはやってますからねー』
「誰に作った」
『へ?えーっと、お妙さんに神楽ちゃんにさっちゃんさんに九ちゃん。あと銀さんと総悟と山崎さんと新八君………と近藤さん。それからお登勢さんにキャサリンさん。あと辰馬さんとか。(桂さんは言わない方がいいよね)』
「……俺だけじゃねーのかよ」
『まぁ、ぶっちゃけそうですね』
「それが彼氏にとる態度かよ」
『わたし友達沢山ですから。土方さんと違って!』
「たたっ斬るぞっ!!」
『すみませーん』
「ったく……(チッ、なんでよりによって万事屋にもあげてんだよ)」
『土方さん土方さん』
「……なんだよ」
『沢山作りましたけど、土方さんのは特別ですよ』
「……」
『ビターにしました』
「それだけかよっ」
『それだけってヒドイ!!手間もかかるのにっ』
「気色悪い演技はやめろ」
『それが彼女にとる態度ですか』
「おめぇが言うなや」
ったくよ。呑気なもんだぜ。こっちはどんだけ妬いてると思ってんだ。イライラして煙草をくわえる。書類に向き直ろうとしたら、また名前に呼ばれた。
「今度はなんだよ」
『……土方さん、』
「……なんだ」
『土方さんのチョコには……。わ、わたしの愛が沢山こもってんだからなコノヤロー!!』
「……っ!!おいっ」
部屋から出て行った名前。俺はため息をついてチョコを見た。ハートの形…。頬が自然に緩む。一口食べてみると、チョコの香りが広がった。
「………あめぇ」
あなただけ特別バレンタイン