sacrifice of quiet | ナノ






「どうして自分が捕まったか、心当たりはあるのか?」
「心当たりもなにも…あたしが死んだ方が都合のいい人間なんて、いっぱいいるもの」


薄暗い部屋の中、手足を縛られた風葵は男達に囲まれていた。
明らかにカタギの人間ではないとすぐにわかるが、風葵がそれに怯えた様子はない。


「で、目的は何?」
「…お前さん、桜木のお嬢様だろ?ちぃっとばかし、お前さんに用があるっつー奴がいるんだわ」
「あっそう」
「…つまんねー女だな。普通の女なら、泣いて怯えてもいい状況だろ」
「お生憎様、あたしはこんなことじゃ泣かないわよ」


風葵は、真っ直ぐ男を見据える。強気な瞳が気に入らなかったのか、男が風葵を乱暴に地面に押し倒した。


「っ…!何すんのよ!どきなさい!」
「アンタ、いい女だよなぁ。とても高校生とは思えねえよ。クライアントからはお前を連れて来いって言われてるが…ま、生きてりゃそれでいいっつってたからな。ちょいと俺らもいい思いしたって、構わねえだろ」


そう言って、男が風葵の服を無理矢理引き千切る。ボタンが弾け飛んで、豊満な胸が露になった。
下着の見える扇情的な姿に、男達が視線をやるが、風葵がそれに怯えた様子はない。
それどころか、忌々しげに彼らを睨みつけていた。
美人が怒ると怖いというが、今がまさにその状態で、下から睨みつける彼女の顔は、一瞬ぞくりとするほど迫力がある。


「…すげえな、お前さん。この状況でよくも…」
「やるならやればいいわ。お生憎様!その程度でどうにかなるような柔な神経は持ち合わせていないのよ」


それは強がりでも何でもなかった。それが本能的に理解ったのか、男は舌打ちをして風葵の胸を掴む。


「痛いわね、もっと加減できないの」


心底うんざりとした瞳だった。今から犯されようとしているというのに、随分と呑気なものである。
それがさらに男の怒りを煽ったのか、もう片方の手で制服のスカートに手をかけた時。
煌めく銀色が視界を掠め、一拍遅れで、男の腕が切断された。


「っ…ぐぁああ!!」

「……しー…ちゃん、」


「おい、人の女に何してる」




底冷えするような、身を切られるような。
体感温度が一気に極寒まで引き降ろされるような、凍て付いた瞳。
氷の刃のような眼。

血に塗れた日本刀を携えた、冷泉紫苑が、そこにいた。




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