十六夜の夢巡り様とコラボ | ナノ
早くも愉快なトラブルが引き起こされている今年の体育祭。 第三種目は、無難な大玉転がしだったのだが、紫苑が大玉を蹴り飛ばし、他のメンバーを完全に置き去りにしてサッカー使用でゴールしたのでここではあまり詳細を語らないでおく。
その光景を見て「紫苑すげー!」とけらけら笑っていた刹那、そして「転べー!そこのドS悪魔ー!!」と叫んでしばかれるあみ。が、次種目である借り物リレーの走者である。
そして、今郷高校からは、花鳥、早乙女が出場者の列に並んでいた。 二人の様子は普通だったが、この状況ではむしろその方が異常とはどういうことだろう。 司会者がそう突っ込みたくなるような状況の中、借り物リレーは始まった。
第一レース。トップバッターは言わずもがなの紫苑である。 お題を開け、そして迷わず走り出した。そして連れてきたのは刹那である。 ちなみにお題は「うざい奴」だった。
「ちょ!ウザイって!!」 「ウザイうるさい」 「紫苑が酷い!」
そして第二レース。 こちらは刹那、あみ、花鳥だった。刹那が最初にお題に辿り着くも、紙を開いた途端固まってしまう。続いてほぼ同時にあみと花鳥も辿り着いたが、あみも刹那同様固まった。 花鳥だけが迷わず走り出す。そして連れてきたのは、今郷高校の生徒会長、阿守麻世であった。 お題は「生徒会長」。全く、普段の行いはこういった時反映される。そしてトップ通過した。
一方、固まってしまっていた刹那だが、少し赤い顔をしながら思い切ったように走り出す。 しばらくして、同じ銀髪をしたクールな美貌の青年を連れて走ってきた。 そしてゴールするも、お題を開いて見た司会者が刹那にこう質問をした。
「えー遠野さん、お題は「尊敬する人」ですが…彼は?」 「……俺の…その…あー……父親、です」 「へぇ、借り物リレーか。尊敬する人、な…」
刹那の答えを聞き、その青年…シードラ=インフェルノはくつくつと笑った。 いきなり連れていかれたから何かと思ったが、まさか…。 刹那は恥ずかしいのだろう。「も、もういいだろ!」と叫んで、足早に立ち去ってしまった。見方によれば、微笑ましい親子の情景である。
…しかし。一方では惨劇が起こっていた。
「あみ、一回死んでみる?」 「ぎゃあああ!!!すみませんでしたぁああああ!!!」
仮にもモデルが、全力で土下座している。 あみのお題は「恐怖の先輩」。選択肢は紫苑一択。これを人は死亡フラグと呼ぶ。
「こんなに優しい慈愛に溢れた僕に酷い言い草だね」 「いや、先輩に溢れてるのは鬼畜さとドS心と歪んだ愉悦…いたたたたたすみません何でもないです!!!」 「ま、君が無様に地面に額擦り付けて頼み込むっていうなら、一緒に行ってあげるのを考えてあげないこともないけど」 「後生ですからお願いします!」 「ええ…どうしようかな」 「鬼!すれば来てくれるって言ったじゃない!!」 「考えてあげるって言っただけ」 「こんの…ドS!鬼畜魔王!風葵と別れろ――!!!」 「何?踏んで欲しいって?それならそうと早く言えばいいのに」 「すみませんちょっと調子こきましたお許し下さい紫苑様」
笑顔であみの頭を容赦なく踏んでいる。それを見て変態保険医こと中原実が息を荒くして興奮していたことは絵的にまずいのでここでさらりと流しておこう。 ただ、あみのゴールはその後五分経ってからだった。いやはや、怖ろしい。
ちなみに。 怖ろしいといえばもう一つ。
「はい、お題」 「早乙女選手早い!ちなみにお題は……「ハゲを隠してる人のカツラ」?」 「本物だよ、そこの人の」 「それPTA会長!!」
最後のレースで、容赦なくPTA会長のカツラを奪い取った早乙女が怖かったと、観覧席で沙弥と真也が話していた。 後にカツラは金髪に染められて返されたらしい。さすがに犯人は早乙女ではないと信じたい。 とりあえず二人で合掌しておいた。
会長よ、強く生きろ。
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