その日以来、僕達は何と無く一緒にいるようになった。無意識に同類だと確信していたのかもしれない。
ちなみに「シド」と呼び始めたのもこの頃で、彼は自分のインフェルノという姓をとても嫌っていたから、シードラと呼んでいるうちにいつの間にかシドになっていた。
僕も同じく姓で呼ばれるのは余り好まなかったから、彼も僕を恭真と呼んだ。
「親友」と呼ぶには余りに近すぎて、
「家族」と呼ぶには余りに似すぎていた。
そんな、奇妙な僕等の関係が始まった。
僕達は二人で何でもやった。
脱走なんか日常茶飯事で、次第に夜も遊び歩き、喧嘩、暴力、賭け事、酒、煙草、セックス。ありとあらゆる享楽に溺れ、浸り、血の滾るようなスリルを求めて、そのままどこまでも堕ちていった。
抑制された反動だとか、反抗期だとか、そんな言葉では到底足りず、免罪符にすらならないという自覚はさすがにある。
だけど、解っていても、止められなかった、どうでもよかった。
シドと、夜の街を徘徊して、見かけたバーやクラブに入って、酒を飲んで、気に入った女がいれば引っ掛けて。
まぁ、その後は解るだろう。
そのままホテルで一晩遊んで学校へ…行ったなら、多分、いい方だ。大体は昼頃まで寝てて、そのままだらだらとホテルで過ごして、また街へ繰り出す。
ほとんどがそんな感じ。さすがに出席日数は計算して登校はしたけどね。
気持ちいいくらいに怠惰な日々だったよ、享楽に耽溺するって、あんなにも気持ちいいものなんだって、初めて知った。
まぁ、今も変わってるかと言われたら、微妙なとこなんだけど。
でも多分、酒とセックスの頻度だけはあの頃がピークだったと思うよ。
毎日女と寝てた。睡眠って、セックスの後に取るもの、みたいな、そんな意識すら身についてたね。
嗚呼、そう。学校の女ともね、それなりに遊んでた。
多分可愛いとか美人って噂が立った子とは、僕かシドか、どっちかとは、一回は付き合ったかヤってたんじゃないかな。
教室とか、階段とか、校庭とか、どこまでバレないか?って遊びに嵌まってね、競って見つかる寸前のギリギリでヤるとか…ああ、上げたらキリが無いね。
まぁ、とにかく。
僕らの中学時代は、そんな感じ。
…今、今と全然変わってない、とか思ってるでしょ。顔に出てるよ。
「オニーサン更にタチ悪くなってるからね!?」
酷いなぁ、進歩はしたよ。
自分の手は汚さなくなった。
「進歩したのは腹黒さか!!」
あと嫌がらせの質。
特にあみちゃん虐め。
「碌なものが進歩してない!!」
ああ、後賭けもやったなぁ…。
何股まで掛けられるかとか、教師と付き合えるかとか、あ、ノーマルの男を落とせるか、なんてこともやったよ。
「…どうなったの…もうやだこのコンビ…」
10股までいって僕が勝った。
教師相手と男相手は負けたよ、僕よりモテるんだから。
「屈辱の勝ち!!」
…ふふ、最低の賭けだろう?そんな遊びばかりしていたんだよ。
女をとっかえひっかえして、悪巧みして賭けて遊ぶ。あの頃の日常なんてこんなそんなものさ。
次第に、家には帰らなくなった。
仲良くなるにつれて、シドの家に泊まる回数が増えていった。冷たい家より、彼と過ごす家が、共に遊ぶホテルの部屋が、とても心地好かった。
「…意外かい?」
「……、もっと、ドライな関係かと思ってたから。馴れ合いを、嫌うように、見えた…」
「線を…、…どこかに線を引かなければ、馴れ合いになるの?僕等がそんな、ちんけな言葉で片付くような、生温い関係だったとでも?」
線を引くには、僕等はあまりにも近すぎた。
何もかもが理解できた、何も言う必要がなかった、二人だけでよかった。
そんな、閉鎖的で排他的な僕等の関係は、
高校に入って、また大きく変化することになる。