雲龍とジョニー
全力でふざけてる
SMクラブとか出てきます若干注意






三十年には少し足りないほどの年月を生きてきて、まかり間違っても、清く正しい生き方をしてきたとは言わない。あまり幸せとは言えない幼少期を過ごし、実の弟への殺人未遂で家を飛び出し、挙句香港マフィアの幹部だ、どう考えても世間様や親に顔向けは出来ない。嗚呼違う、そんなことは如何でもいいのだ。実の弟も正直大嫌いだし、世間体なぞどうでもいいし、親なんかくたばればいいくらいにしか捉えていない。しかし何が言いたいかって、それは一つだ。

これはないだろ、カミサマ。



「雲龍!貴方ハ綺麗ナ顔ネ!トテモ素敵ヨ!」
「げぇ…!また出た!!」



確かに俺は非道なことを腐るほどした。嗚呼、嫌ってほどやったとも。だからってさぁ、これはないだろ!変なちょんまげみたいな頭して変な女装して変な片言喋る変態男に追いかけまわされるとかこれは何の悪夢なんだ!夜の繁華街で出くわしたその男(ジョニーというらしい)に慌てて背を向けて全力疾走をすれば、駆け抜ける景色と追いすがる男の野太い声。やめろ俺にそんな趣味はない!


「あれ、雲龍ー?」
「っ、真白…!?」
「アンタ何やって…」

「雲龍ー!素敵ナ貴方!是非コレヲ付ケテクダサーイ!!」
「ふざけるなーー!!!!」



ストリップバーという名の実質はSMクラブの裏口からひょっこりと顔を出した真白を勢いのままに再び中に押し込み、そこへと慌てて逃げ込む。見てない、俺は見てない。変態男が真っ赤な首輪を持っていた姿なんて、俺は見てない!
俺の様子から何があったのかをだいたい察したらしい真白が、くつくつと至極愉快そうに瞳を細める。その笑い方がいかにも楽し気で人を食ったような笑みだったから、思わず手が出た。痛そうな音が狭い裏口のスペースに響く。痛い!なんて騒ぎながら頭を押さえる馬鹿を無視して、中へと足を進めた。


「…なァに、雲龍、SMショーでも見ンの」
「阿呆、違ェよ。…何、お前またショーやってンの、」
「えー、オーナーに頼まれちゃって。ほら俺、見た目いいからァ、舞台受けするンよね」
「ついでにえげつねェことするしな」
「あは、そーォ?」
「地下クラブでもなきゃ、お前みてぇなのを使えないさ。この変態野郎」
「ありがとォ」
「褒めてねぇよ」
「えへ。…でも、そンな俺に付き合ってる雲龍も、十分変態だと思いまーす、この加虐趣味ド変態」
「黙れ被虐マゾ野郎」
「違いますー、俺はサドマゾですー」
「そうかよこのキチガイサイコパスや、ろ……」
「ン?どしたの、雲龍……うわ…」

「雲龍ー!是非貴方ヲ私ハ甚振リタイデース!!」

「帰れーー!!!!」



ドアを開けた瞬間、目に入ったのは舞台上で鞭を振るっているチャイナ服の女装変態男。嗚呼、ジーザス!!神様そんなに俺が嫌いかこんちくしょう!!

その後当たり前に真白と二人、クラブから逃げ出したのは言うまでもない。