※紫苑ヤンデレ化注意




君の視界に映る人間は、僕だけだったらいいのに。
生徒会室の窓から見える中庭には、たくさんの男…もとい下僕に囲まれている風葵の姿がある。ベンチに座って回りに傅かれている姿は、さながら女王様。
別に、周りの男が風葵に恋愛感情を持っていないことは知っている。いや、中にはそういった下心で尽くしている奴もいるのだろうけど、残念ながら風葵にとってはただの下僕で人括りだ。わかってるよ、君が愛してくれるのは僕だけだって。
でもね、理屈じゃないんだ。
頭ではわかっていても、心がついていかない。
そういうものでしょ?
書類が一段落したところで、携帯を取り出す。最近恒例となった番号を選んで、決まり文句となった言葉を吐き出した。
制服の奥に隠した薄いパレットナイフを確認して、準備は万端。
さぁ、鬱憤晴らしにいこうか。



生徒会室を出て、廊下を歩いていく。心なしか足取りは軽かった。
さぁて、今日は誰から殺そうかな。
あまりに熱心な奴は殺しすぎると気付かれるから、端の方から消していく。
殺しやすそうな奴はあらかたやってしまったから、そろそろ慎重にならないと。帰りが遅くなる奴や、遠くから通ってくる奴は闇に紛れて殺せばいい。うっかり表にばれてもいいように、なるべく無差別殺人を装ってやるから、意外に処理も面倒だ。
まぁでも、その辺りは先ほど呼びつけた掃除屋に任せればいい。
自分は殺せばいいのだ。愛しい彼女に近づく害虫を。
ふふ、と抑えきれない笑みを零して、校舎から出る。夕日が赤く染まり、まるで血の色のようだった。



「…ほどほどにしろよ、」
「……刹那」



死角となっていた場所から、見知った銀髪が顔を覗かせる。
忠告はしても、まるで止める様子の伺えないその言葉に、やはり似たもの同士だと笑えてきてしまう。
青と紫の色違いの瞳に映る自分の影は、夕日か血か、赤で真っ赤に染まっていた。
狂気に染まった瞳を、まるで他人事のように見つめて、愛しい彼女にこんな顔だけは見られたくないなぁとぼんやりと思った。



次の日、新たに三人の被害者が出た。