時が経つのは早いねぇ、と恭真が言った。
珍しくセンチメンタルな親友の発言に、シドが振り返る。何を今さら、と、声に出さずに呟いた。恭真の視線の先には、何をやらかしたのか、紫苑に追いかけられる刹那と、刹那に巻き込まれている琥珀の姿がある。
思い出すなぁ、と、また恭真が言った。何がだよ、と少しぶっきらぼうに聞き返す。


「僕達も、あんな感じだったよね」
「…そうだな」


あんな風に、ずっと馬鹿やってたよねぇ。
だからかなぁ…。
目の前に、あの頃の僕らがいるような気がするんだ。



互いに容姿のよく似た、互いの息子。…一人は娘だが、まぁ息子の括りでいいだろう。
刹那が逃げて、琥珀が巻き込まれて、それを紫苑が追いかけて、それをまた先生らしき人が数人追いかけている。
ああ、懐かしい。
恭真が逃げて、シドも逃げて、それを何人もの先生が追い掛け回して、それで…。


「…うん、懐かしい」





「紫苑!追いかけてくんなー!俺が悪かった!悪かったから!反省してます!」
「刹那!?何で俺は巻き込まれてんのー!?」
「逃げるな!二人纏めて反省室行きだよ!大人しく捕まれ!」
「冷泉くん…!学校を破壊しないで下さい!!」


ああ、本当。
愛しい子供達は、本当に自分達に似たらしい。
どこから入ったのか、屋上の貯水タンクの上から悠々と見下ろして、二人で笑った。