異能力バトル系
ネタバレ注意




私立如月学園。そこは、言わずと知れた天下一品の名門校。入学には超難関試験を突破しなければ敷居を跨ぐことすら許されず、その上、家柄や財力がなければ門前払い。だが、その分、入学したからには最高の環境が約束されることとなる。家柄、財力、権力、頭脳。まさに、他人が羨む全てを手にした人間の集まった学園なのだ。
そんな天下の名門校、高等部男子寮の一室では、不穏な会話がなされていた。


「…侵入者ぁ?」
「そ、加藤が"聞いた"ってさ」


陽の傾いてきた夕方。電気もつけずに、無駄に広い一室のベッドに胡坐をかいて座る、銀髪の男。その傍には、座る彼と全く姿をした男がだらしなく寝転がっていた。
桐生十夜と、桐生聖夜。限りなくそっくりな彼らを見分けられる人間はそうそういない。二人に向き直って、椅子に座り煙草を咥えた茶髪の男、白皇龍が面白そうに笑って話を続ける。


「何でも、今晩決行らしい。裏門と正門から二十人ほど…しかも、その中の何人かは、選りすぐりの保持者(ホルダー)だとよ」
「…なるほど?」


この世界には、超能力がある。
どんな法則性で生まれてくるのかは知らないが、とても低確率で、保持者(ホルダー)と呼ばれる、能力(スキル)を持った人間が生まれてくるのだ。
久しぶりに舞い込んできた大物の気配に、十夜は横にしていた身体を起こし、龍に向き直った。にぃ、と、挑発的に口元を吊り上げ、好戦的な笑みを形作る。
保持者は滅多に姿を現さない。騒がれたくない、というのももちろんあるだろうが、一番の理由は危険だからだ。珍しいものは、希少価値があるから価値が上がっていく。故に、常に誘拐の危険が伴っていた。
周りには隠しているものの、優秀な保持者である三人としては、普通の喧嘩ではどうしても物足りない。


「加藤情報なんだろ?じゃあ間違いないよな…なぁ、聖夜、龍」
「言われなくたってわかってるって、」
「そうそう、じゃなきゃ、このタイミングで言わないだろ?」


ちなみに、加藤というのは三人と同じ保持者で、テレパシーの能力を持っている。どうやら、使い方を誤った際に聞こえてきたらしい。
ナイス失敗だ、と笑って、三人が立ち上がる。
そこらに放ってあったジャケットを無造作に羽織って、そのまま寮室から出て行った。







続きます