二人の学生時代ifネタ
もしも男相手の初めてがお互いだったら?
発言のみですがいかがわしいので注意






「……シド、セックスしたい」
「はぁ?」


中学生、というものはいたく好奇心が旺盛な年頃である。特に、このくらいの年頃になってくると性への感心が高まるのはごく自然なことといえよう。とはいえ、白昼堂々の恭真のこの発言は別に性への興味からでも女への飢えからでもない。
そもそも、彼ら二人にとって、女体への飢えなどというのは一番遠い位置にある言葉であった。
見目麗しいその外見である上、幼いながらに自分の使い方をよく心得ていた彼らは、既に同級生では到底経験し得ないほどのことを当然のように体験している。
であるからして、彼のこの発言の真の意図は、自分達が今だ経験し得ていないことに関する話題であったのだった。


「…してくりゃいいんじゃねーの?ちょっと甘い顔してみろよ、お前好みの綺麗なお姉さんがわんさか寄って来るぜ」
「そうじゃなくて、どうやったらお兄さんが釣れると思う?」
「お兄さん?なんだよ、お前、もう女に飽きて男に走んのか?」
「ただの興味だよ、男同士でも出来るって聞いてね」
「ふぅん…」


余談ではあるが、この会話が成されている場所は、彼ら二人の在籍する名門私立如月学園の教室の中である。
教室でどんな会話をしているんだと先生からお咎めを受けそうな内容ではあるが、シドの母国語でもあるイタリア語で成されている会話であるので、注意をしようにも、そもそも内容を読み取れる人間が存在していなかった。
その上、彼の使うイタリア語は少々癖のある、いわゆる方言、江戸時代でいう山の手言葉のようなものであり、彼を通してイタリア語を学んだ恭真もまたその言葉を話すようになってしまっていた。
よって、たとえイタリア語がわかる教師が来たとしても、相当慣れ親しんでいなければ理解するのは難しいだろう。
よって、二人は安心して猥談もサボりの相談も犯罪スレスレの内容も教室で話していた。


「どう?シドは興味ない?」
「ないとは言わないな、」
「だろっ?それで、提案なんだけど…」


シドの返答に破顔した恭真が、何かを企む子供のような笑みを浮かべて身を乗り出す。
にんまりと笑って、そのまま爆弾を投下した。


「シド、俺に突っ込むのと突っ込まれるの、どっちがいい?」
「っげほ…!はぁ!?」


思わず、飲んでいたコーヒーを噴出しそうになった。
まさかの恭真の言葉に、さすがのシドも盛大にむせ込む。
そんな心情を知ってか知らずか、さらに続けた。


「いや、どうせなら最初はシドがいいかなーなんて。ちなみに僕はタチ希望」
「俺もだっての!っつーか、なんで俺…!」
「いやー、なんか…そういう目で見てみると、シド以上に魅力的な男っていないじゃないの?って思って」
「……あー、そう」


そう言われてしまえば、悔しいことに納得してしまう自分がいるのも確かだった。
同じように、その対象で考えた場合、自分にとっても最高と思える相手は、目の前の男なのである。
そこまで考えて、俺の負けだ、と降参のポーズを取る。
してみたい、と思った時点で、恭真の策略に引っ掛かったも同然なのである。


「いいぜ、付き合ってやるよ」
「じゃあ行こうか」


授業なんかより、目の前の快楽が大事だ。
教師が教室に入ってくる前にドアから駆け出す。人通りの少ない教室に手馴れた様子で侵入して、くすくすと笑いあった。








その後一時間の間に、どちらがタチになるかで喧嘩になり、最終的に先ほどのお返しとばかりに一瞬の隙を突いたシドが恭真を押し倒して勝利を収めたことは、また、別の話。