鈴太くんと深織くん史織ちゃん双子と真白のクリスマス
双さんに捧ぐ!
グロ、下ネタ有り







「はぁーいメリークルシミマース!クルシミマシタ!」
「いぇーい俺が作ってみましたァー」

「さて俺はどこから突っ込むべきか」
「どうしてですか、とっても素敵なケーキじゃないですか」
「真白に任せた俺が馬鹿だった」


うわぁ、とあからさまに遠い目をした鈴太の視線の先で、真白と深織が二人で仲良く大き目の皿を掲げている。掲げているが、その中身が問題だ。きゃっきゃと男のくせに女子高生みたいなノリではしゃいでいる二人の真ん中のケーキと称された物体からは、赤い何かがたらたらと床に滴っている。その赤い何かは、まかり間違ってもベリーソースとかイチゴソースだなんて可愛らしいものではない。と、いうか、そもそもケーキそのものが、クリスマスケーキといった可愛らしいものではない。とりあえずスポンジがあるのは見える。スタンダードな乳白色のスポンジに、真っ赤なホイップクリームが乗せられ、クリスマスらしいチョコプレートが乗っていた。マトモなのはここまでだった。


「おにーさんがァ、俺が目玉好きだからッてェ、いーッぱいくれたンだァ、色んな色のォ」
「奮発しちゃいました☆」
「わーいおにーさん大好きィ」
「いえーい僕も好きだよーこれで君がバケモノみたいに強かったら抱いてほしかったかもねーあははー」
「ザンネーンおにーさん抱きそこねたァー、でも俺まだ人間止める気ィなァーい」


とどのつまり何が言いたいかって、そのケーキには大小様々色とりどりの眼球が転がっているわけで、ほんの二時間前まで普通だったケーキを知っている鈴太は嫌悪や驚愕こそないものの、あの二時間で何がどうなったんだとただ呆れるしかなかった。しかもよくよく見れば、そのケーキの間に挟まっているのは人間の肉ではないだろうか。肉というか、最早指だ。爪付きの指がスポンジに挟まって、多分女の肉らしきものがはみ出ている。形状的に胸部だろうと推測が出来た。この調子でいけば、てっきりイチゴとかそういう類の色付けだろうと思っていた赤いホイップクリームは、血液ブレンドなのではないだろうか。

そんなとんでもないケーキが兄と、友人というかなんというかよくわからない存在の男から飛び出してきたというのに、全く動じず、「では皿を用意しましょう」と棚から四枚の皿を取り出して包丁を握り、切り分ける気満々の史織は図太いのか異常なのか。それが竹松史織という女性であるというのは鈴太が一番よく知っているかもしれない事実なのだが、まさかイエス・キリストも自分の誕生日の前日まで祝われ、加えてそれを口実に眼球ケーキを食べられる羽目になるとは思わなかっただろう。可哀想なことだ、と、あっちに飛んだ思考が同情した。しかし平気でフォークを握るくらいには、鈴太も十分異常ではある。


「どうぞ、如月さん」
「史織ー僕この赤目がいいなー」
「じゃあ俺はァーこの緑目ー」
「はいはい、順番に切りますね」


異常、バケモノ、歪、狂気。ありとあらゆる単語をもってして、ようやく語れるような、そんな四人の集まる部屋だった。いるだけで人を惑わせるような少女と、声だけで人を破滅させられるような少年と、バケモノに片足突っ込んだ青年と、異常を溶かして型で詰め込んだような青年と、そんな四人が一堂に会していた。




「鈴くん鈴くん、それおっぱいだよーそんなの食べるとか鈴くんのへんたーい」
「よし、削ぐか」
「どこを!?やっだ鈴くんのDV男〜」
「おねーさん自分のケーキは自分で死守した方がいーよォ」
「そうですね、さて領収書はどの割合で切りましょうか」



蝋燭に照らされて、淡く光る真っ赤なケーキ。愉し気に、馬鹿騒ぎする四人。どこの家庭でもあるような、当たり前で、愉しそうな、そんな一夜の光景だった。メリークリスマス。どこかの路地で、材料になった女性の死体が血の涙を流した。