二人の中学時代のお話。
基本的に、二人とも酷い。
胸糞悪い虐めの話。






学校という閉鎖された環境の中では、ひとたびそこで権力を握るものが現れた場合、その支配は絶対的なものとなる。
クラス全員が仲がいいなんていうのは本当に稀で、そこには必ず、派閥であったりグループが誕生するものだ。
その中でも、クラスの中心となるようなグループは発言力を伴い、そこの意思がクラスの意思となる。

ここ、如月学園という名門校でも、その鉄則は変わらない。
クラスにはいくつかのグループが生まれていて、中心となるグループは絶対的だった。
中心グループのメンバーは総じてモテる。それは、男でも女でも、だ。

言わずもがな、恭真とシドも中心グループにいて、学校内での、その権力、発言力は群を抜いていたと言ってもいい。
学内でもモテる女子を何人も周りに置いて、好き勝手していた。
校内で発生した虐めを煽って助長させたこともある(とはいえ、すぐに飽きて放置した)し、手当たり次第に女子とヤったこともある。
誰も彼もが、彼ら二人に逆らおうとは考えなかった。
誰だって我が身が可愛い。機嫌を損ねれば、どうなるかわからない。
平気でえげつないことを笑ってする恭真はもちろんのこと、その傍にいるシドもだ。
あまり動かないが、その分行動した時が怖ろしい。
恭真を止めもしない時点で気付くべきだったのだろうが…。




「あんたってさぁー…見ててイライラするんだよね」
「きゃはは!言えてるー!」

教室で平気で起こる、悪質な罵倒。虐め。
こういったものは、教師が介入すれば万事解決なのだろうが、この学園においてはそうはいかなかった。
世界中から、家柄、学力、権力共に揃った、将来有望な名門の跡継ぎばかりの集まる学園だ。
下手をすれば、教師の方が危ない。
どうしようもないこの状況で、教室の中で起こるものはさらに悪化の一方だった。

一声でクラスメイトを従わせられるだろう恭真も、シドも、この状況に動こうとはしない。
興味なさげに本を捲るシドに、机に座って女子生徒と話す恭真。
中心グループも、二人が動かないなら何もしない。
むしろ、目の前で起こる娯楽を楽しげに見ているようでさえあった。
不意に、恭真が顔を上げる。
不思議そうにした周囲の女子に断って、一人の女子生徒に向かって嘲笑する女子二人のもとへ歩いていく。


「ねー、あはは!」
「ね、それって楽しい?」
「きゃ、恭真くん!」

後ろからふざけるように二人に抱き着いて、にこにこと笑ってそう口にする。
えー、楽しいって言うかぁ…と、きゃっきゃと話し始めた二人とおかしそうに話を始める。
その時、びくびくとその様子を見つめていた女子と、目が合った。
にこ、と、恭真が笑う。




「俺はこっちのが好きだけど、」

ちゅ、と、彼女の頬に口付ける。
あ!と声を上げた女子に気付いているだろうに、それを無視して、体を離した。


「恭真、もう行こうぜ」
「ああ、うん。…じゃ、またね」

本を読み終わったのか、一連の流れをまるで無視して、シドが声をかける。
それに返して、軽く笑いかけ、シドと共に教室から出て行く。
残された少女は、クラス中から嫉妬の視線を浴びることになってしまっていた。





「お前、煽るの、好きだな」
「まぁね」
「俺には理解出来ねえな…めんどくせえ」
「無関心だもんね」

けらけらと笑って廊下を歩く。
ここにおいて、支配者は完全に確立してしまっていた。
新しい娯楽を見つけたように、恭真は笑う。

「…明日から、楽しみだなぁ」











恭真は虐めをしません。
何故かって?それじゃ生温いからです(おい)