「深織」
「鈴君、僕ちょっと用事があるからっ……」
最近、深織が俺を避け始めていた。
意味がわからない。俺が何をしたっていうんだ。
しかも、なんでもないくせに、鈴君呼び。余裕がなくなった時に、そう呼ぶはずなのに。
ずっと唇を噛んで、眉間に皺を寄せている深織。
それに、さっきからおかしいんだ。
変な機械音に、くせぇ臭いが深織からする。
女の香水ならまだわかる。だけど、何だろう。この……。
「深織」
「鈴君。僕生理中なんだ。ほっておいて」
「お前男だろーが!」
「老人だから勞って……」
「お前十代だろ!?」
「僕、帰る」
「おい深織!」
深織の肩を掴んだ瞬間、深織が甲高い、女が達するような声を上げながら体をびくりと震わせた。びっくりして、手を離すと、深織はヘタリとゆかに座り込み、地面に頭をつける。
「……おい」
「あーあー。もうー。鈴君僕もうだめー。動けないー。鈴君先帰っといてー」
「いい加減にしろ!」
「うわっ!」
こっちを見ない深織を、無理やり正面に向かせて、俺は目を疑う。
深織の股間に、シミができてる。深織は視線をずらして、泣きそうになってたけど、それでも泣かずに笑みを浮かべていた。
「驚いておもらししちゃった」
「……」
「ぎょ、凝視しないでよ。罵ってもいいよ! むしろ今慰めないで!」
深織が、素直に漏らすとか言うか? 普段なら、きっとジュースがこぼれたとか、そんな嘘つくだろう。だから、これは漏らすよりもバレたら嫌なこと。
嫌な予感のせいで、普段なら抵抗するようなことができたんだろう。深織の股間に俺は手を這わせた。びくりと震えた深織に、手にしっとりと、粘着質なものがつく。
「せーえき?」
「鈴君! 離れちょっ!?」
深織のズボンを無理やり落とすと、深織のパンツはズボンよりもひどいくらいに濡れていた。ガマン汁と、精液のせいだろう。それも落としたことで、何か線みたいなものが深織のけつから伸びていることに気がついた。
「……んだこりゃ」
「んあっ!」
「!?」
その線をひっぱると、深織からまたあの声が聞こえる。深織の体が生まれたての動物みたいにぷるぷる震えていて、何だかそれが可愛いなんてぼんやり思ってしまって、思わずその線を軽くひっぱったりする。
「すずっあっ! んっ、やっ! ぁっ!」
「えろっ……」
「何を考えひぃ!」
あちぃ。頭がどうにかなったみてーだ。
ただ衝動に任せるままに、深織のケツ穴から伸びるそれを引き抜くと、そこからどろりと、白い何かが溢れ出した。呆然と、それを眺める俺に、上から深織がすすり鳴き始める。
え、泣いてる? あの殴られても罵っても泣かない深織が、泣いて……つか、これ、精液? なんで深織の中から? 深織がなかにいれれるわけないし、じゃあ誰か? ならさっきの機械はバイブ? 栓の変わり?
フツフツと、怒りが湧き上がる。何だか玩具をとられたような、そんな気分。
「……んで泣いてんだよ。自業自得だろうが」
「鈴君にはわかんないよ……」
「は?」
「好きな人に、こんな醜態みられて泣かない子がいるなら聞いてみたいね」
それでも、笑おうとしている深織が今日は痛々しくて、深織への怒りが吹っ飛んでいく。
男同士は気持ち悪い。あの礼みたいな感じにはなりたくない。だから、俺は深織の気持ちなんか受け取らない。それでも、俺は深織と一緒にいるときが一番安心できたんだ。だから、深織の悲しそうな顔を見るのは、嫌だった。
「……なくなよ。俺が悪かったから……」
「ならほうっておいてよ。僕疲れた」
「そうにもいかねーだろ。これ、どうすんだよ」
「また汚れるからいい」
「……援交か?」
「最初は違ったけどねー。利害の一致だよ。父上の援助するからもっかいってなし崩しにしてたらこの有様。本当に情けないったらありゃしないよ」
どこかの誰かに、深織を好き勝手にされている。
俺の大切な友達を、あんな女みてーな顔にしてるのか。
俺の知らない深織。それを誰かが。
「なぁ、俺が援助してやるから、もうやめろよ」
「は?」
「俺が、金払うから……」
「哀れんでるの? 余計なお世話だっ!?」
深織を押し倒して、俺は美織にまたがる。
これは、深織のため。俺は普通だ。気持ち悪くない。
そう言い聞かせて、俺は触りたかった深織の場所に触れる。
「俺が、人を哀れに思えるわけねーだろ……」
本当はわかってんだよ。こんなのエゴだって。
俺はただ、深織が欲しかっただけだったなんて。
深織のためとか言って、本当は自分のためだって、本当は。
でも、お前のためだと思わないと、俺はお前をだくことはできない。
お前を、俺のもとに引き止めることはできない。
お前が、俺のとこにいるためなら、俺は自分に嘘をつくし。
「お前だって、俺が好きなんだろーが。別にいいだろ」
お前の気持ちだって、利用できんだ。