FAITH
眼鏡をかけていて


きっちりと1時間15分かけてセットした髪型


キリッとした目


人が見れば一瞬怯えるんじゃないかと思う程


威圧というかなんというか...こう、怖い雰囲気がある。





「永四郎ー」




「どうしましたか、平古場クン」




平古場は少し困った表情をして木手の前にあらわれた。
キョロキョロと木手の周りをみる平古場。
それを不思議に思う木手




「遠也君みなかったかと思ってな。」





「遠也クンですか?俺も遠也を探しているのですが、見つからないのです。」




平古場が探していたのは遠也だったようだが、生憎木手も遠也を探していたようで辺りを見回す。
いませんね、と言うと右手で眼鏡の左側をくいっっと上げる




「んーー。比嘉祭の事で聞きたい事があったさ....永四郎もか?」





手に持った比嘉祭に関しての資料を見ながら平古場ははぁとため息をつく





「えぇ、俺も聞きたい事があります。お互い手分けして探しましょう。見つけたら平古場クンが探していた事も伝えます。」



平古場クンも俺の事お願いしますよ、と付け足しテニスコートへと向かう。まだ、放課後が始まったばかりとはいえ、同じクラスの遠也を見かけないのは不思議でいつも一緒に部活へ行くのだが、今は比嘉際の準備まっただ中。保健委員会の委員長であり、1組の比嘉祭の代表の1人である遠也は毎日忙しいようだった。今日も代表の会議が5限目にあった。他のクラスの代表の生徒は各自準備に戻る姿を見る。




「分かってるさー。それじゃーなー」



平古場を背中で見送りつつテニスコートを見回す。当然、誰もいるはずがない。今日は各クラスを優先に準備をするようにと木手が部員に言っているので部での出し物に関してはとくに手をつけないつもりだったからだ。テニスコートには人はいないし気配もない...がしかし。どこからか、パコーンパコーンとボールが弾む、打たれる音がする。



「誰かいますね...?」



音のする方へと木手は歩き出す。





「......」




畑の奥にあるちょっと広くなった所にボールの音を出している犯人がいた。ジャージではなく制服で、少し青みがかった長い黒髪を後ろで一つに束ねた一瞬女性と見間違えそうなそんな男子生徒が壁に向けて打っていた。
勿論、その男子生徒が探していた遠也なのだが、少しプレイを影で木手は見ていた。すぐに話しかけても良いのだが、その姿をみていたくなった。




シュパァンッ!!


と音をたてて凄い勢いのボールは壁に突き刺さるかのようにあたり、そのまましゅぅという音と共に下へ落ちた。




「永四郎、そこで何してるさ?」



後ろに目があるのかと言うように、背を向けたまま木手の名前を呼びながらバッグへラケットをしまう。




「...貴方を見ていただけです。」




気付いていたんですね、と言いながら眼鏡をくいっとあげる。



あぁ、そういえば..と木手は口を開く



「平古場クンが、遠也君を探していました。」



まぁ、俺も遠也に用があるのですがね、と言いこちらに向かって来る遠也を待つ。



「凛君が?あーー、比嘉祭のことか。後で行こう。んで?永四郎は?」




木手と遠也二人並んでその場を離れる。畑を抜けて、テニスコートに出る。



「比嘉祭の事です。これを...後で確認しておいて下さいね。」



木手が遠也に渡すと、にふぇーでーびる。と受け取る遠也。




「何で...いや、何でもない。」



「...何で、こことわかったか?ですか?」



まぁ、そんなとこさぁと言いながら髪の毛をほどく。手櫛ですこし梳かしながら再び髪を結ぼうとするが木手がそれを拒む。


「?永四郎、何するんばぁよ」




「俺に結ばせて下さい。」


きょとんとしながら、いいさぁと言いながらゴムを木手に渡す。男なのか?と思う程綺麗な長い髪。サラサラと風に靡く。永四郎?という声に今結びますから待って下さいと、器用に髪を集めきゅっっと結ぶ。


「ん、にふぇーでーびる、永四郎。でも、急にどうしたさ?」



「遠也の髪、綺麗で結びたいと思いまして、駄目ですか?」



「いやー。別に嫌だったら結ばせてないさ。」




そうですよね、と木手は小さく微笑む。それにつられて遠也も微笑む。





「ちばろう、永四郎」



遠也がきりっとした目つきに変わる。




「?」



「地区大会。」




「ああ。そうでね、頑張りましょう。」



静かな二人の時間に少し涼しい風が吹き抜ける。その風に乗るかの様にその中から声が聞こえる。





「あーーーー!遠也君!!」





平古場が手をブンブン降りながら、歩いて来る。




「信頼してるからな、永四郎。」



そう言うと平古場の所へ軽く走っていった。




「...えぇ、俺も遠也の事もみんなの事も...信頼していますよ。」










ーーーそして、目指すのは全国大会優勝


prev next

bkm
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -