「ふぅ。」
ハボックは軍部のベンチで煙草をふかして一服していた。
少し離れた所から声が聞こえる。
「そうなんですよ〜。」
「へぇ、そうなのか。」
ブレダとフェザスだ。
「ん…?フェザス大将?」
声の主を確かめるために、ベンチから少し身を起こした。
「俺はブレダ見たいなのは好きだな。」
「そうですか!嬉しいですね、大将に言われると。」
ニコニコと笑ってブレダにそう言った。楽しそうに話している二人。
ハボックは途切れ途切れに聞こえている。
「それに比べてハボックは嫌いだなぁ…。」
「…?!き、嫌いっ!?」
突然聞こえてきた(嫌い)にハボックはビックリした。
上司と部下の関係だが、何時も頼りになり優しく教えてくれたりしていたフェザスの言葉とは思えなかった。
加えていた煙草をポロッと落としてしまった。
「あれ、少尉?どうしたんですか?」
フュリーが心配そうな顔をしてハボックに近付いてきた。
「き、きき、きら…い?!」
「えぇっ〜な、何があったんですか!?」
フェザスの放った(嫌い)の一言でハボックの脳内では、嫌いがエコーされていた。
「あぁ、確かに大将は嫌いで仕方ないですよね、煙草は。」
フェザスが嫌いなのは煙草であって、ハボックではなかったが、今のハボックに聞こえるはずがない。
「はぁ…………。」
「おい、ハボック!」
ハボックは仕事に身が入っていない。
そんな、ハボックにロイが叫ぶ。
「はぁ…。き、きらっ…はぁぁっう。」
「ハボックッ!!!」
ロイは怒鳴った。
「えっえあっ…はいっ!」
いきなり怒鳴られたハボックは何がなんだか分からなかった。
「はぁ…ハボック。お前、どうしたんだ?」
ロイも何時もと違うハボックを不思議に思い心配していた。
「そうだ、そうだ。ハボらしくないぜ?」
ブレダがハボックの肩に手を乗せた。勿論、ブレダに悪気は全くない。ハボックの勘違いな訳であるが…
「何でもないっ!!」
ブレダの手をバッとどかした。
「ハボ?」
「ハボック?」
「すいません。少し出てきます。」
そう言うと部屋から出て行った。ロイもブレダも唖然とした。
「あ、あぁ。ハボックはどうしたんだ?」
「さ、さぁ?」
部屋を出たハボックは廊下を歩いていた。
「はぁ…俺、嫌われてたのかよ…。そうだよな。」
「ん!ハボック。」
「っ…!?」
今、まさに…会いたくなかった人だ。
「どうしたんだ?」
不思議そうに顔を覗くフェザス。
「貴方は俺の事…嫌ってるんでしょう?」
「は……い?」
意味不明なフェザス。
「俺の事っ…。」
「ぁ…もしかして、ブレダとの会話聞いてたな?」
ハッとするハボック。
「ハボックが嫌いなんじゃなくて、煙草が嫌いなんだよ。嫌いというか、苦手かな。」
「ほ、本当っすか?!」
「あぁ、そうだが。」
「良かったぁぁ!俺、嫌われてるかと…。」
喜びのあまりフェザスに抱き着いた。
「ふぇっ!?…ハ、ハボック!?」
「あぁっ〜良かった!本当に良かった!大好きっす!フェザス大将っ!」
ニコニコと笑うハボックはフェザスをぎゅぅっと抱きしめた。
「煙草は嫌いだ…けど、ハボックの匂いは好きだな。」
ハボックからする煙草の匂いが………