どんな君も
秋が近づいてきたアメストリス。

時期も時期で街はハロウィン一色になりつつある。



無論、国の平和を守るために働いている軍に休む間など無い。





「大佐。手が止まっています。」



「あ、あぁすまない。やるから、銃をおろしたまえ。」


苦笑いしながらリザに銃を下すように言うロイ。



「……。はぁ…。」




ロイの手が止まっている理由は勿論外のハロウィンの飾りである。


彼女であるフィアスとハロウィンデートをする予定だったのだが
ロイにいくつかの仕事が舞い込んできたのだった。
そのため、デートが出来なくなってしまったわけで・・・



「……。」



このありさまである。



手が動いては止まり動いては止まり…の繰り返しである。



「…大佐。」



「あ、いや・・・すまない、今やるか・・・ら?」


リザの声に脅えつつ仕事に手をつけようとしたのだが、
その、リザの手にはロイのコートが握られていた。


「ちゅ、中尉?」



「今日だけです。」



「…あ、あぁ…ありがとう。」


明日はちゃんと仕事して下さいとコートを預けロイの背中を見送った。



街はオレンジ色に染まっている。



夕焼けのオレンジ。


窓から漏れるオレンジの光。


街灯のオレンジ。


そして、ハロウィンの飾りのオレンジ。





待ち合わせの時間はとっくに過ぎている。

秋の肌寒い風がフィアスの長い髪を揺らす。



「どこか、回ろうかな。」


仕方無いもの、と自分に言い聞かせる。


その場から立ち上がった。
街の方へ歩き出そうとした時、


タッタッタッタッタッタ......

後ろから誰かが足音が聞こえる。
かなり急いでいるようだ。





――――――――――――――――


「っはぁ、はぁはぁ…。フィアス…」


ロイは約束の場所へ走った。
無我夢中で走った。
唯一つフィアスの事を考えながら。



――――――――――――――――


近づいてくる走る足音は軍靴独特の音がする。

不思議そうにフィアスが振り向くと、温かい何かに包まれた。


ぎゅぅ


「……?!」


「フィアス、ごめん。」


「ロ、イさん?」


いきなりの出来事に動揺を隠せないフィアス。


「悪かった、一人で待たせてしまって…。」


悲しそうな表情でぎゅうっっと抱きしめる力を強める。


「…良いんですよ。仕方ないんですから。」

微笑みながら抱き返す。
微笑みはどこか悲しそうであったが…。


「今からでも、行こうか?」


すっと離れ、甘くとろけそうな眼差しがフィアスへ向く。


少し間を開け


「フィアスがよければ…だが。」


「はい。是非!」


にっこりと笑うフィアスを見てロイは頬染める。



「でわ、行こうか…フィアス。」


手を差し伸べるロイ。
とても紳士的で日頃のさぼり癖のあるロイとは思えない。



「喜んで。」


ロイの手は大きくて優しいぬくもりでいっぱいだった。







ハロウィンの街並みを見て目を輝かせているフィアス


「わはぁっー!綺麗っー!見て下さい、ロイさんっ!」


大きなカボチャのランプを指さしてにこにこしてロイの方を向く。


「なかなか、でかいな。」


にこにこ楽しそうなフィアスを見ているだけでロイは幸せなのである。

フィアスを見てふと笑うロイ


「どうしたんですか?」


「いや、ね…君と一緒に過ごせて、私は幸せ者だなと…。」


それを聞いたフィアスは頬少し染めた。


「ぼ、僕もロイさんと一緒に過ごせて、すごく幸せです。」


「そうか、良かった。」






少しの間の沈黙。



何故か居心地がいい沈黙。




フィアスは照れていて下を向いていた。


「フィアス…」


ロイが名前を呼ぶ


それに、いつものように返事をするため上を向く



「は…いっ…んっんっ?!」



ロイの優しいキス。




「…愛してるよ、フィアス。」




どんな君も大好き。



どんな君も愛している。



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