・セクハラから静雄を守る臨也
校内放送でシズちゃんが呼び出しを食らった。また説教か、といつもなら流すところだが今回は違う。
呼び出しをしたあの教員はシズちゃんを性的な目で見ている事を俺は知っている。然り気無く体に触る手が明らかに色欲を孕んでいた事に俺が気付かない訳がない。まぁシズちゃんは馬鹿だから気づいてないだろうけど。
「……………つまり、先生と取引がしたいんですよ」
「…何を人聞きの悪いことを、教師を馬鹿にするものじゃないだろ折原」
「先生は俺の…、折原臨也の情報網を侮っていらっしゃるんですか?」
一般的に見れば俺は所謂優等生というヤツなんだろう。しかし俺自身の素行は悪くないが、俺の趣味の一環から生まれた情報網は校内には留まらず他校にも知れ渡っている。来神学園の生徒だけでなく教師の情報も、俺は握っているわけだ。
人間は稀薄だなぁ。
やっぱりあの男も自分の地位が大事だった訳だ。まぁ俺は人間を平等に愛してるから今回は見逃してあげる。でも次はないよ。
取引を終えて部屋を出れば、ちょうどシズちゃんが此方にやってきた。
「あ?何やってんだノミ蟲」
「先生にちょっと頼み事があってね、そしたら先生忙しいみたいで」
じゃあ俺も帰って良いかな…とさっきまでの不機嫌そうな態度から少しだけ嬉しそうになるシズちゃんは犬みたいで可愛いなぁ。でも絶対にこの状況を分かっていないよね。そもそもなんで呼び出しを食らったとかも分からないで着たんだろう。変に真面目だから。
単純無知は可愛いけど時に罪だな。
「もうちょっと危機感持とうよー、二人きりで密室とか襲われなくても色々されちゃうかもしれないんだよ?」
「……あ?何言ってんだ?教師が俺を殴ったりはしねえだろ」
第一俺なら負けねえし、あ、でも教師を殴るのは流石に退学になんのか……などと見当違いな事を言うシズちゃんは何でここまで鈍いかな。ある意味羨ましいんだけど。呆れ気味に話を聞き流してると、何かを思い出したようにポツリと呟いた。
「……何か知らねーけどお前のお陰で説教なしになったからな、それは感謝する」
そう言って照れ臭そうに笑うのは、狡い。本当にシズちゃんって無防備って言うか、何か危なっかしい。
だから俺は、君を守る事をやめるわけにはいかなくなるんだ。
君専用ヒーロー!
(俺が守ってあげなきゃ!)
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