誰かを喜ばせてあげたい、と思える気持ちは素晴らしい事だよ。と旧友が言っていた。別に、…だからじゃないけど、喜ばせてあげたい誰かを思い描いた時に、真っ先に浮かんだのは、彼だった。
「シズちゃんっていつも牛乳だよね、…飽きないの?」
「別に、イザ兄たまに苺のも作ってくれるじゃん」
確かにたまにイチゴジャムを混ぜて簡単ないちご牛乳を作ったりもする。だが、飽きはしないのだろうか。
元々あまり我が儘を言う子じゃないから、色々我慢してるんじゃないのかな、とか柄にもない事を考えてしまったのだ。
「イチゴとバナナとメロンとココア」
「?」
「どれがいい?」
きょとん、とするシズちゃんに促すように笑顔で問い掛ける。
「……メロン?」
「ちょっと待っててね」
台所に立ち、最早彼専用になっているマグカップに牛乳を注ぐ。そこに粉末を溶かしていく。サラサラとした粉末は、うっすらと緑色に染めた。
…ちょっとだけ、見た目が微妙な気がしなくもないけど、まぁ売り物だし味は良いと思う。
微妙な気持ちになりながらもシズちゃんにカップを渡す。
「はい、どーぞ」
「…………」
「メロンがいいって言ったのはシズちゃんだよ?」
「…………」
「?」
カップの中身をじっと見詰めて、飲み出した。確かに、一番不安な味ではあるけど一応、売り物だからね。ここ重要。
ていうかまさかメロンをチョイスするとは思わなかった。無難なバナナやらココアに行くと思ってたのに。
そもそも牛乳とメロンって…合うの?
色々疑心暗鬼になりかけていると、シズちゃんの声で現実に戻された。
「イザ兄すごい!これ本当にメロンと牛乳の味する!おいしい!!」
「え…あ、あぁ…うん」
きらきら喜ぶシズちゃんを見ながら何故か俺は、人生最大の博打に勝ったような気分になっていた。
まぁ、あれだ。
喜んでくれたから、いっか。
魔法をかけよう!
(君を喜ばせる為に)
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