生死を賭けたラブコメの続き




月に一度やって来る悪夢のような時期に、自分を突き付けられているようでうんざりしていた。
気分だけでなく体調も腹痛と頭痛に加えて貧血と最悪なコラボレーションで、今日は早く帰ろうと思ってたのに、どうしてこいつが目の前に居るんだ。




「………だからさ、人は誰かを愛したり愛されたりしながら生きていく」


こいつは何故か本当の俺を知っている。10年以上隠し通して来たからどこで知ったのかは分からない。
そして何故かこの男は最近、俺に対して愛だの恋だのを説いてくる。何がしたいのかさっぱり分からないがノミ蟲野郎の事だ、新しい暇潰しなんだろう。


「君の場合はどっちになるのかな?」

「っ!」


やめろ、やめろ


「愛す努力をしなきゃ、愛されないと俺は思うんだけど」


お願いだから、やめてくれ。

お前なんかに言われないでも全部ちゃんと理解した上で俺は俺で生きることを決めたんだ。
俺は愛すことが出来ないから、愛されなくたって良いんだ。って、ちゃんと、ちゃんと、分かっているんだ。



「………はっ、何が愛だよ……笑わせんなノミ蟲が」

「…………?」

「んなもん俺には必要ねえんだよ!」


教卓を持ち上げながら思いっきり叫べば視界が揺らぐ。ヤバい、頭に酸素が回らない。ちくしょう、ノミ蟲野郎が…っ!






教卓を持ち上げた直後、電池が切れたかのように倒れてしまった彼を抱き上げる。触れた身体は思った以上に柔らかくて、軽くて、明らかに男とは違う身体だった。どこからあんな怪力が出るんだろう、こんなに細い腕で。

保健室に到着すれば保険医は不在で鍵がかかっていたがそんなこと俺には関係ない。ポケットから合鍵を取り出し、室内へ入り彼をベッドに寝かせる。

青白い顔で眠る彼を見下ろして、思い返すのは倒れる前の悲痛な叫び。


「………必要ない…か」


彼がどんな思いで生きてきたかは知らないが、自分の性を隠すくらいだ、相当な覚悟を持っていたのだろう。

それでも、あんな寂しい目で言われても全く説得力がないよなぁ…。


「俺は、必要だよ」


君がどんなに要らないと言っても、俺にとっては大事なもので。こんなに焦がれたのは初めてなんだ。
彼へ向けた愛の言葉を呟くと広く白い部屋に飲み込まれないようにそっとキスをした。




















君の愛をください
(それだけでいい)