この頭がいかれてしまったような…いや、もういかれてる男は、このまま素直に引き下がる気はないらしい。
そもそもこいつの話はいつも突飛すぎて頭がついていかない。


「なんでだめなのさ!」


いつもこうだ。もう嫌だ、嫌すぎる。
誰かこのバカに自重という言葉とその意味を教えてやれよ。


「…ここ、どこだと思ってる」

「公衆トイレ」

「で?お前は何がしたいって?」

「え、そりゃあ、シズちゃんと…」


俯いて顔を赤らめるな、マジで気持ち悪い。ちっとも可愛いくねえから、普通に気持ち悪いから。


「…お前、マジで頭大丈夫か?」


所構わず盛って来るこのノミ蟲に頭痛がする。第一、俺は外はあまり好きじゃねえんだよ。シャワー無いわベッド無いわで、汚れるだけ汚れて、しかも体痛くなるし後処理が面倒くさい。臨也の方がそういう事を嫌がると思っていたのだが何で、いきなり。


「とっ…とにかく!俺は今が良い!」


そう言うや否や、この発情してるらしい馬鹿はいきなり俺に抱きついてキスして来やがった。
ふわ、と臨也の匂いがしたと思ったら、思い切り舌を入れられて、反応してしまう俺の身体が憎い。
ちゅ、と舌の絡み合う音が聞こえて、俺の歯列をなぞられる。


「ん…っ………ふ、あっ!?」


ぐ、と臨也の舌が俺の咥内にねじ込まれて、ぐちゃぐちゃにかき回される。
驚いて眼を見開くと、赤い眼と目が会う。
その赤い眼を細めて薄く笑うと、臨也の舌が更に俺の舌に絡み付く。抵抗をする俺を抑え込むように、わざとちゅっとエロい音を出して、そのわずかな反抗すら閉じ込める。
その瞬間がくりと崩れ落ちた体を、臨也は支えようとはせずに、そのまま唇を離す。


「ぅ…ぁ……」


情けなくも俺は床にへたれこんでしまった。くそっ、あいつのキスが悪いんだ。汚いから嫌だと言った床にへたりこんでしまったのも、身体中が熱に浮かされているのも、全部、全部……臨也のキスが悪いんだ。


「…トイレの床は汚いんだよね?」

「う…るせ……っ」


キスだけで腰が砕けたなんて事を臨也には悟られたくない。そのまま流されてこんな所で本番なんて御免だ。
俯いてゆっくり肩で息を整えながら、悟られないように反論する。


「も…っ、これ、で…満足、だろ」

「ええ、シズちゃん……俺、もっとしたくなった」

「お前…っ!いい加減にしろよ!」


見上げて睨み付ければ顔を反らしやがった。ぶつぶつ何かを言っているようだがやっぱりまだヤりたいようだ。
しつけえよお前、俺は嫌だって言ってんだろうが……此処じゃ。


「……………帰るぞ」

「!」



あー、駄犬の扱いも楽じゃない。いや、ノミ蟲だから駄蟲か?
………とりあえず、立てないから手を貸せ馬鹿野郎。






(ベッドの上では俺が主人だけどね!)