相棒である黒猫のイザヤと、会話が出来なくなった。でも元々何かと煩い奴だったから、清々すると思っていた。
「喋れなくなって、一週間か」
「にゃー」
俺が話し掛ければ律儀に答える。
最初の2・3日はそれなりには俺もイザヤも慌てた。ただイザヤがあまりににゃーにゃーうるせえから握り潰してやろうかと思ったが、こいつもこいつなりに必死だったんだろう。セルティのようにPDAを持たせてやりたかったが、猫のこいつにそんなものは使えない。
「にゃーん」
「………んだよ」
わからない、イザヤの言葉が。
いつも煩いくらいに俺に話し掛けていた、あの饒舌な言葉が聞けないだけで、何で、何でこんなに…。
「………」
「にゃー」
「…っ、馬鹿…っ、馬鹿!わかんねえよ…、ちゃんとっ、わかるように…、喋れよ…っ」
声が聞きたい。
いつもみたいに、煩く俺に話し掛けて欲しい。なんて、そんな事思うわけないと思ってたのに。
でも実際はどうだ。不安に押し潰されそうだ。イザヤの声が聞こえなくなって、ただの猫でしかないイザヤに、ひとりぼっちになったみたいで寂しさを感じていたんだ。
「……、くすぐったい、ばか」
いつの間にか流れていた涙を、舐め取っている黒猫が、馬鹿だなぁ、といつものように笑ってる気がして、笑いながらもまた涙が落ちた。
(心配しないで、シズちゃん)
(俺は君から離れたりしないよ)
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