この保育園に保育士として勤めたのは5年ほど前だった気がする。
最初は右も左も分からず予想外の行動を取る子供たちに悪戦苦闘していたが、最近ではやっと余裕も出てきた。

今は自分の担当するクラスがお昼寝の時間で、いつも喧しい子供達がすやすやと眠っている姿に思わず顔が綻ぶ。

電気を消すとベランダに座る小さな影が目についた。



「シズちゃん、なにしてるの?」

「何だ臨也かよ」

「先生をつけようね先生を」


むにむにした頬っぺたをつねってやると何すんだよ馬鹿!って怒るけど、微妙に呂律が回ってないのが可愛い。そのまま頭をぐりぐり撫でてやると子供扱いすんな!って怒られた。



「シズちゃんはさー、なんで子供扱いされたくないの?」

「俺は早く大人になって、幽を守ってあげるんだよ」


幽君は弟君で、ここの兄弟は仲が良い。両親共働きで支え合って生きてるからかな。そのまま日曜の朝にやっているヒーロータイムの話に流れる。何だかなぁ…1年で変わるヒーローにここまで熱中出来るとか子供は凄いよな。俺も昔はこんなんだったのかな…20年近い昔の事なんか覚えてないけど。尚も必死にヒーローについて語るシズちゃん。可愛いんだけどそろそろ先生は飽きてきたよ?


「ねぇシズちゃん」

「何だよ、これからファングが出てくるんだよ」

「……いやそうじゃなくてね、君の憧れてるヒーローになれるかはわからないけど、大人になれる方法なら先生知ってるよ?」

「……本当かっ?!」

「本当だよ、でもこれは大人の世界の秘密だから、シズちゃんは秘密って守れる?」

「大丈夫、俺は誰にも言わない!」

「そっか、じゃあおいで?」




大人の遊び、教えてあげるよ。