・高校生
・幼馴染み






自室で本を読んでいると外から窓を叩く音がした。あまりに懐かしい音に胸がざわつく、俺は今、どんな顔をしているんだろうか。



「……どうしたの?」



一軒家とはいえ分譲住宅の集合住宅ともなれば家同士の距離は近く、この生まれた時から隣に住む男とはお互いの部屋の窓の距離が近く、そこから部屋を行き来していた事もあった。
ただそれはあくまでも過去の話であって、今こうして俺の部屋に彼が入って来るのは何年振りだろうか。



「…へぇ。告白された、ねぇ…」

「…………お前そういうの得意だろ」



中学に入った頃から静雄は臨也を避け始めた。それが決して素行の良くない静雄が"優等生"の臨也に気を使っての行動だという事を臨也は理解していた。
それでも一度違えてしまったものを取り戻す事はあまりに困難で、二人の間の溝だけがどんどん深まっていった。

今でも、覚えている。



「……折原?」

「シズちゃんはさぁ…」

「?なんだよ、………っていうかその呼び方やめろよ」



今の俺達を昔の俺達と繋ぐ唯一残った呼び名も拒否されてしまえば、俺とシズちゃんの過ごした時間を否定されてるみたいで、どうして、どうして。
分かっている、頭では分かっているけど心の奥底が叫んでいる。

本当は、本当は…っ!!



「シズちゃんはさ、その子とキスとかセックスとかしたいって思わないの?」

「…なっ?!」



顔を真っ赤にするシズちゃんの腕を引っ張り、己の身体に引き寄せるとその唇を噛みつくように奪う。
舌を入れ、絡めて吸い付き、歯列をなぞり口内を存分に犯してやった。



「…っは、んぅ……っ、」



唇を離せば飲みきれなかった唾液が糸になって繋ぐ、自分の唇を舐めながら酸素不足に肩で息をするシズちゃんに笑いかける。



「こーゆー事、その子とするんだよ?」

「臨也…っ、…てめ…っ!!」



やっと、やっと、呼んでくれた。
俺の事、昔みたいに臨也って呼んでくれた。あぁ嫌だ、嫌だよシズちゃん、シズちゃんをどこの誰だか分からない女になんて渡したくないよ、ずっと見てたのに、ずっと想っていたのに、どうして、どうして…!




「…っ、何で、お前が泣くんだよ…」



泣きたいのはこっちだ、馬鹿野郎と俯いて溢した言葉は刺々しいのに、背中を撫でる手は優しくて昔のままだったから、俺は情けなく縋りつく事しか出来なかった。




















望んで捕らわれた
(過去という鎖に)