・7巻後のネタ
・限りなく臨→静






ああ、もう本当に。
(踏み潰された純情)


「気持ち悪い」


俺が入院している間に増えた情報。平和島静雄の情報に軽く目を通しながら溜め息を吐く。彼奴が俺の愛すべき人間に退化されるのは困る。人間になると言うことはつまり彼奴も他の人間達と同じように愛さなくてはいけない、そんなの罰ゲーム以下だ。吐き気がする。

「全く…、物好きも増えたもんだね」

増えた情報は単純に、彼奴と臆する事なく関わる人間が増えているという事。昔は、俺と新羅だけだったのになぁ。
新羅が笑いながら「所謂モテ期ってヤツじゃないかな?妖刀に幼女と金髪後輩だなんて随分マニアックな嗜好だけどね!」とか言ってたのが何故か俺を苛立たせた。
何それ、モテ期?ふざけないでよね、人一倍愛されたがりなのに異常な体質の為に「愛」だけでなく「人」に対しても滑稽な程に臆病な彼奴に、モテ期だって?馬鹿馬鹿しい、彼奴は何時だって独りぼっちなのがお似合いなのに、俺だけがそんな彼奴を―…


あれ。ちょっと待って欲しい…これじゃあまるで、俺が。



「―っ?!」

ガツンッと、頭にコンビニのゴミ箱が直撃したお陰で現実に戻ってきた。「誰がこんな事を」なんて分かりきっている事は考えない。痛む頭を抑えて顔を上げれば、金髪にバーテン服の男が邪神のような笑顔でこっちに向かって来る。

おかしいな、何でこんなに、心臓がドクドクと、嬉しいんだろうか?


「いーざーやーくーん?池袋には来るなって何度言えば「ありえない」…はァ?」

「ありえない、そんな」
(触れたいとか、思うだなんて)


「…?よく分かんねーけど死にてぇみたいだな、今日こそ殺してやる、一思いに死に曝せよクソノミ蟲が」

静雄が己の後ろにあるガードレールを引き抜こうとした瞬間、臨也が素早い動きで静雄の正面に回り込み、耳を噛んだ。「―――ッ?!なっ、て、てめっ、臨也、ななな何しやが…っ?!」

「煩いよ黙って」


そのまま慌てて力の入らない静雄の様子に歪んだ笑みを深くし、その体を引き寄せる、ぎゃあぎゃあ喚いて居るが構わない、今はただこの違和感の正体が知りたくて。
どうしてこんなに満たされた気持ちで居るかとか、この騒ぐ口を己の唇で塞いだらどんな反応をするんだろう、とか。


(ああそうか、やっと分かった)(大多数の人間達のように愛したいんじゃなくて)



「バカなシズちゃん、可愛いね」

(ただ一人特別な君を愛したいんだ)





















初恋を知った少年
(つかまえた)
(あいしてる)