君と関わる時間の中で、着実に起こる感情の変化。いや、本当は一目惚れだったのかもしれないな。
好きで好きで堪らない君に贈る、言葉。
「シズちゃん、好きだよ」
「…」
「シズちゃんってば」
「…」
「…静雄」
「…っな!」
「あはは、俺のこと無視するからいけないんだよ!」
予想外の可愛いリアクションに笑いながら言えば、シズちゃんの表情は更に苦々しいものになった。
「そりゃ、毎日気持ち悪い告白されりゃ無視したくもなる」
「…それ、酷くない?」
だって俺は、臆病で。
拒絶されたくないからこんな風にしか、言えないけど。
それは、大きな矛盾。
好きなのに、大嫌いで、伝えたいのに、伝えたくない。
「…俺のこと揶揄って楽しいのか?」
「本気なんだけど」
これだけは、断言した。
本気。そう、本気だよ。
本気で、シズちゃんが好きなんだ。
ただ、それだけ。それだけなんだ。
わかった、と呟いたシズちゃんの表情が、少しだけ変化した。
「俺は、シズちゃんのこと好きなんだよ?」
「だからわかったっての」
「…拒絶、しないんだ」
「あんだけ言っといて何を今更」
「…そっか」
「じゃあ、こういうこと、しても?」
シズちゃんの顔を引き寄せた。その唇を………奪う事は、出来ないけれど。
本当に矛盾だらけの俺の行動。伝えたいのに、突き放されたくなくて。臆病なのに欲しがって。
ああ、このまま、唇を奪えればどんなに良いんだろう。それでも俺の心のどこかが、そんなことは絶対に許さなくて。
動揺の欠片も見せないシズちゃんの瞳は、真っすぐに俺を映していた。
ふいに、シズちゃんが口を開く。
「……お前さぁ」
「え…」
一瞬、何が起きたのか。
俺は理解できなかった。
「……欲しいなら、奪い取るものじゃねぇの?」
そう言いながら、シズちゃんは俺の唇から自らのそれを離す。
俺とシズちゃんを銀の糸が繋いだ。
「…っ!」
俺は、がた、と勢い良く席を立って、信じられない状況に動揺を隠せずにいた。
今、俺は…っ、シズちゃんと…?!
「あ、俺もう行くから」
呆然とする俺をよそに、シズちゃんも席を立ち、悠々と帰り支度をしている。
「じゃあな」
何事も無かったように、いつものようにシズちゃんは帰っていった。
取り残された俺は、きっと酷く間抜けな顔をしているんだろう。
「……欲しいなら、奪う」
俺は誰もいない教室で、シズちゃんの感触を思い出しながら言葉を繰り返す。
それだけで良かった?本当に?
思考を巡らせればどんどん汚い感情が露になっていく。
シズちゃんの色んな表情がみたい、色んな声が聞きたい。あんなキスなんかじゃなくてもっとぐちゃぐちゃに口内を犯したい。身体中が俺とシズちゃんの精液や体液にまみれるまで犯したい…………。
あぁ、俺のこんな感情を引き起こしたのは君なんだから、ちゃんと責任取ってもらわなくちゃね、シズちゃん。
殺してでも奪い取る
(だって、好きだから)
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