「お前はやり過ぎだ」

「だってー、シズちゃんの泣いた顔が見てみたいんだもん」


いつも仏頂面でさ、気になるじゃん?とにやにや笑う男に呆れる。
こいつは本当に人間を自分の玩具としてしか見ていないようだ。そして人間から逸脱した静雄は彼の観察対象…暇潰しの的になってしまったようだ。


「……静雄だって泣いたり笑ったりするだろうが」

「えっ、何それドタチン見たことあるの?!」

「………その呼び方やめろ」


肯定も否定もせず、取りあえず不服な呼び名だけ訂正しても我関せず、なんで?どうやって?ずるい!と勝手に盛り上がる。
いや、別に狡くはねーだろ。


「静かにしろ。ここは図書室だ」

「……ちぇー、ドタチンのケチー」


読んでいた本で軽く頭を叩けば、つまんないなー、などと言いながら臨也が出ていった。ドアが閉まったのを確認して、本棚の奥に声をかける。



「行ったぞ」

「…………悪い」


本棚に凭れてしゃがみこむ静雄は、土埃や返り血や自分の血でボロボロで、殺したい臨也が居ても動けなかったくらいに憔悴している。
……いくら何でも連日これじゃやり過ぎだろう。怒るだけが静雄の感情じゃない、悲しむことも、喜ぶ事もあるのに。



「あんまり……無理するな」

「……っ!」

「辛くなったら、ここに来い」

「………っく、…うぅ…っ」


ぽんぽん、と頭を撫でてやると泣き出してしまった静雄は、泣くのを我慢していた小さな子どものようで、とても幼く見えた。


静雄が傷付けば泣くと思っているあたりが臨也はまだガキだと思う。

恐らく幼い頃からずっと傷付く事には慣れていたのだろうから泣かせる、じゃなくて、泣ける場所になってやれば簡単なのになぁ…、いつになったら気付くんだか。


まぁ…教えてやるつもりはないがな。




















ななきそなきそ
(泣きたくなったら)