最近、ノミ蟲野郎がよく池袋に来る。
池袋の様子が最近おかしいのと関係がないはずがねぇ。
害虫は早めに駆除をしなくちゃいけねぇ、ノミ蟲も害虫と一緒だから駆除しなきゃいけねえだろ。


「だからサイモンさんよォ…そこどいてくれや、ノミ蟲野郎が殺せねえ」

「シズオー殺ス、物騒、ダメヨー、イザヤハネタニハナラナイネー」

「ははっ、サイモンってば何気に酷いねー」

「喧嘩ヨクナイ、オ腹スクカラ喧嘩スルヨ、寿司食エバミンナ仲良クナルヨー」


ニコニコと的外れな事を言う男に戦闘意欲が削がれる。そういや昼休憩中だったんだよな…まぁ、食後の運動にはなったが。



「(喧嘩っていうかこれが俺の愛情表現だからね。ていうかさ、いつもシズちゃんの攻撃を素手で受け止めるとかサイモンってもしかして本当は元傭兵だったりするのかな?)」

「(随分傍迷惑な愛情表現だな。そして過去を詮索する男は嫌われるぞ)」



…………?

いきなり二人が分からない言葉で話し始めた。そういやサイモンの出身は露西亜らしいから…露西亜語か?あのノミ蟲が喋れるのが何か、腹が立つが如何せん会話の内容が分からない。俺を無視して会話を進める二人に何か、いつもとは違うイライラが出てくる。何だこれ。
原因不明の苛立ちに苛まれ始めると、後輩が声をかけてきた。


「先輩、休憩が終わります。午後の仕事に向かいます」

「あ、あぁ……なぁヴァローナ、お前はあいつら何の話をしてんのか分かんだろ?何話してんだ?」


あいつら、と二人を指してヴァローナがちらりと確認すると微妙に彼女の顔が強張った。



「……………拒否します。知らない方が幸せな事もあるとトムさんが前に言っていました」


トムさんが待ってます。と急かされれば行かざるを得ない。何か腑に落ちないなと思いながらも歩き出すと、ヴァローナがふいに臨也に向かって歩き出した。



「(いい加減素直にならないと、失ってからじゃ遅いですよ)」

「(…………そんなヘマはしないけど…一応、善処するよ)」



ヴァローナの言葉に少し面食らった顔をして、嫌な笑顔を浮かべながら言葉を返すノミ蟲。何だこれ、何かムカつく。俺だけ仲間はずれっていうか……いやそんなんが寂しいなんて思うほど俺もガキじゃねえけど。


とりあえず、何か俺だけ馬鹿みたいで悔しいから露西亜語を覚えようかと考慮する事にした。




















何かムカつくんだよ
(それは疎外感だよ)