仕事を一旦放置してキッチンでフライパンに向かう。リビングには仕事に使っているパソコンと、俺が弟みたいに可愛がっているお隣の子供。
パソコンには触るなって言い聞かせてあるし、触ったらどうなるかは自分が一番理解しているから下手に遊ばれる心配はない。
「なぁ、イザ兄」
彼が突然にやって来るのはいつもの事だから気にしないし、まぁ時間的にも小腹が減る時間だったからパンケーキを焼いていると、リビングから聞こえた少しだけ弱々しいその声に、俺はなるべく優しい声で返事した。
「どうしたの?」
「…明日は何の日だか知ってるか?」
期待と不安が入り交じったみたいな目でこちらを見ている、素直なのに変な所で素直じゃなくて、それが可愛いと思う。
俺は特に気にするようでもなく、フライパンを見ながら答える。
「…世界で一番可愛い子の誕生日、かな。ねぇシズちゃん、その子のプレゼントには何をあげれば良いかな?」
きょとん、とした顔をしていたのが意味を理解できたのか真っ赤になった。こういう感情豊かな部分は本当に可愛い。いや、彼の可愛さはそれだけじゃなくて語り尽くせないんだけどね。
綺麗なきつね色に焼き上がったパンケーキを皿に移し、蜂蜜をたくさんかける。俺の世界で一番可愛い子は、甘いものが大好きだから。
「で、何が良いと思う?」
皿を置きながら質問すると、少し顔を伏せたまま、小さな声で呟いた。
「…………………いい」
「?」
「覚えててくれただけで、いい………………………と、思う」
少しだけ恥ずかしそうに笑いながら蜂蜜のたくさんかかったパンケーキをおいしい、って食べる目の前の子供に今度は俺が真っ赤になった。
それ、反則。
(可愛すぎ!)
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