今日こそ、言わなくちゃいけない。
手放すのは嫌だけれど俺の我が儘でこいつを縛り付ける訳にはいかないから、今日こそ解放してやるんだ。

新宿の、臨也のマンション。
散々弄ばれてだるい体を叱咤しながら、パソコンに向かう家の主に目をやる。


「……臨也、…今まで、ごめん」


俺がこいつに依存するのは良くないんだって事はずっと前から理解していた。だけど、偽りでも愛を俺なんかに謳ってくれるのはこいつしか居なくて、でも、…俺なんかに縛られるのは、良くない。


「…は?」

「大丈夫だ、これからは会っても話しかけねぇ…」

「何言って…?」

「付き合ってくれて、ありがとな」


これで、日常に帰るんだ。
俺は今、ちゃんと笑えてるだろうか。



「あぁ…もう、本当に馬鹿、……俺はそんな言葉が聞きたいんじゃないのに」

「……?」

「その言葉に隠した本音を言う勇気はないの?って事だよ」


苛立ったように睨まれて、一瞬怯んだ。図星を突かれた事と、その目の冷たさが純粋に怖かったからだ。

本音なんて、言えるわけない。
言葉にすれば、重い重い鎖になって、確実に縛り付ける事になるのに、臨也の目は、逃げることを許さない。




「…………好き、だ…」


言ってしまった。
もう、戻れない。

重荷にはなりたくなかったのに。
割り切っていれば楽だったのに。



「あはは、やっと言ってくれた」

「…………」

「でもごめんね、俺はシズちゃんの事、好きじゃないんだ」


知ってる、お前が俺に愛を謳うのは、ただの暇潰しであることも、お前が俺に持つ感情に好意に値する感情がないことも。

ぐいっと手を引かれ、顔が近づく。
顔を寄せられ耳朶を甘噛みされるとそこから次の快感を連想するのか熱を持ち始めて。


「俺はね、愛してるんだよ」

囁かれた言葉は甘く重かった。




















縛られたのは俺
(重い想いで。)