・捏造来神時代
「アレは化物だよ」
教室のドアを開けようとして、聞こえてきた声に手を止める。
「だってあの馬鹿力は人間じゃないよ、ナイフで傷もつかないし」
「まぁ確かに常識を越えてるけど化物は言い過ぎだろうが」
―化物、人外
そう呼ばれるのはいつもの事。
慣れてきた事なのに、心臓を鷲掴みにされたように痛くて苦しい。
痛い、痛い、…痛い。
チャイムが鳴ったと同時に俺はその場から走り出していた。
サボって公園だなんて、俺はリストラされたサラリーマンかよ。と内心自嘲するが仕方ない。他に行く宛てもないから。平日の昼間と言えど、それなりに人は居るものだな。
ベンチに腰をかけながらぼんやり考えていると、友人である黒バイクの運び屋が公園の前を通りかかり、こちらに気付きやってきた。
『どうかしたのか、静雄』
「セルティ…」
『顔色が悪いな…どこか痛むのか?』
「…いや、大丈夫」
嘘だ。本当は痛くて苦しい。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い、痛い。
『大体今は学校じゃないのか』
「ちょっとサボりだ」
『あまり感心しないぞ』
「今から戻っても授業全部終わってるだろうからな」
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い、痛い痛い、いたい、いた、かった。
痛かった?何が?
『でも顔色は戻ったみたいだ。良かった』
「ああ、本当に大丈夫だから」
心配かけて悪いな、と笑う静雄の表情は、いつもの強い彼そのものだったが、どこか壊れそうで危うかった。
麻痺して壊死する
(目にも留まらぬ速さで)
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