必殺家庭料理とリンク






「あれ?今日も静雄購買なんだ」

「あー…また忘れたみたい、だ?」

「いやいや疑問文で聞かれてもこっちが困るよ」


確かに持ってきたはずなんだけど、昼になってカバンの中を見たら弁当がない、仕方ないから購買で適当な物を買うしかない、本人としては心底不本意な事が平和島静雄には数日間続いている。



「ったく、余計な出費だ」

「まぁ、たまにはいいじゃねえか」

「でもこうも続くとなぁ…金が勿体ねぇんだよな」

「うーん、それもそうだね。あぁそういえば珍しく臨也は弁当だ、……ね…?」



場が固まる。
注目すべきは、折原臨也が弁当を持ってきているという事ではなく、彼の持つ弁当箱。どこかで見たことあるというレベルじゃない、それは紛れもなく、行方不明の弁当そのものであった。


「………臨也君よぉ、てめえが手に持ってるその弁当箱は誰のだ……?」

「え、何シズちゃんってば自分の弁当箱も忘れちゃったの?!」

やっぱり馬鹿なんだねー!と言いながら玉子焼きを食べる臨也に反省の色はまるでない。だってシズちゃんの弁当は俺の物でしょ?と某ガキ大将のような言葉に、静雄の我慢の限界はあっさり訪れる。



「臨也てめえ…人の弁当盗み食いしやがって覚悟は出来てんだろォなぁ…」

バキボキと骨を鳴らしながら笑う姿は邪神そのものだ。確かに静雄の気持ちも分からないでもない、購買での出費が本当に無駄な出費という事なのだから一発とは言わずボコボコにしないと気が済まないのだろう。大人しく殴られる相手ではないが。




「…だ、だって、シズちゃんのご飯が美味しいからいけないんじゃん!!」


逆ギレな上に意味が分からない。こりゃ静雄がキレてまた喧嘩かな、と察知した門田と新羅は食事を続けながら器用にとばっちりを食らわないよう避難する準備を始める。

しかしその言葉を受けた静雄は、フリーズしてしまった。普段あまり褒められ慣れてないからリアクションが取れないんだろうか、ましてや臨也が相手だ。あ、だの、うう、だのと唸っていて、目は泳いでいる。



「…っ、なら…お前のも作ってやるから、俺のは…持ってくな」

「「?!」」

「え…っ、本当にっ?!」

「お、俺と幽の作るついでだからな!!別にお前の為に作るとかそういう訳じゃないんだからな!!」


いつの時代のツンデレだよとツッコミたくなるテンプレ的なセリフを真っ赤になりながら捲し立てる静雄を見ながら、避難の準備をしていた二人は大丈夫そうだとそのまま食事を継続する。

何だかこういう事を青春と呼ぶのだろうが、それにしてはかなり歪過ぎる。第一青い春なんて綺麗な言葉はこの二人には似合わないし、青春に失礼だな。―そう自己完結しながら新羅は愛する彼女の作った少し味の濃い玉子焼きを口に運んだ。




















僕らの青春はビジリアン
(深い深い歪んだ色)