・日々也さんが予想の斜め上過ぎた






確かに憧れてない訳じゃなかった。
静雄には臨也がいて、津軽にはサイケがいて、形はどうであれお互いが想い合っているのは微笑ましくて、少しだけ寂しかった。俺に向ける「好き」とは違う「好き」を持ってるみんなが羨ましくて、自分には何故ないんだろうか、欠陥品なんだろうかと悲しくもなった。そんな俺を見かねた津軽とサイケが教えてくれた、お伽噺の王子様。



――白いお馬さんに乗ってくるんだよ!

――マントをつけて、カボチャパンツを穿いて王冠をのせているんだ

――そんな学芸会みたいな王子様居るわけねえだろ…

――分かんないじゃん!いつかデリを迎えに来るかもしれないんだから!



その時のサイケと津軽があまりに真剣に話すから、じゃあそいつを待ってるよと笑った。王子様とやらが来てくれたらといってお互いに惹かれ合うなんて確率は低いけれど、一目会えたら、なんて淡い憧れを抱いて居たのは認める。認めるがこれはなんだ。




「……で、お前は何なんだよ」

「俺は日々也、……迎えに来ました、姫」



どこぞの劇団員かと思わせるような言い回しに顔がひきつる。いや、確かに王子が来ればいいとは言っていたけどこれはない。マジで王冠をのせてマントを翻した王子が白馬に乗ってくるだなんて、出来の悪いギャグだ。
せめてもの救いがカボチャパンツを穿いていない事だろう。これでこの男がカボチャパンツを穿いていたらきっと爆笑していた。

サイケの悪戯かとも考えたがそうではないらしいから逆に困る。どう対応して良いのかが分からない。考えあぐねていると日々也は馬から下りてきて、俺の前に跪いた。



「ちょっ、お前、何して………」

「やっぱり……俺は、君に出逢うために生まれてきたのかもしれない。いや、きっとそうだ」



手をとられ、甲にキスをされれば、身体中の体温が一気に上がるのがわかる。気障ったらしい仕草が妙に似合う男を恨めしく睨めば、そんなに可愛い顔で見詰めないで下さい、と笑われる。何なんだよ一体。

どうやら不本意ながらこの男が俺の王子様、とやらなんだろう。覚えのない感情に戸惑いながら、俺は日々也の手を取った。









王子様は白馬に乗って
(姫を迎えにやってくる)