・スタドラ12話ちょっとネタバレ?
・カナコさまな臨也とシモーヌ静雄
・別に臨也は結婚してないよ!







俺はあの男が嫌いだ。
金・地位・名誉・権力……、人が一生のうちに手に入れたいと願う全てのものを僅か16歳にして手中に収めているあの男、折原臨也は俺のお仕えする旦那様だ。
眉目秀麗で頭脳明晰なあの男の思考は読めないが、彼はひょっとしたら寂しいのではないかと思う。学校という場所へ通うのも初めてだと笑っていた。彼は他人の羨む物は全て手に入れたけれど、一番望んだ普通のありふれた日常は何一つ持っていないのだから。
人が好きだ愛してると笑うあの男は、本当は愛されたくて仕方ないのだろう。ただの16歳の折原臨也として、対等に接してくれる相手を探していて、それは従者である俺には一生叶わない事であるとは理解している。



「静雄は本当に臨也が好きなんだね」

「…………なっ、はぁ?!」

「だって今の静雄、優しい顔をしてるよ?」



にこにこと笑う新羅は、仲が良いに越したことはないよ!また学校の備品が壊されたら堪ったものじゃないからね!とかぬかしたから一発殴ってやった。


俺はあの男が大嫌いなんだ。
傍若無人で身勝手で、いつも余裕そうに飄々としていて、冷酷な現実主義に見せかけて本当は誰よりも優しい理想主義なあの男が俺は、嫌いなんだ。






「静雄は本当に臨也の事が好きだよねえ」

「……新羅は案外唐突な事を言うね」

「この前静雄と話した時に、君の事が大嫌いだと言ってたよ」



とても優しい表情だったけどね。と新羅は続けてカップに手をかける。シズちゃんは俺の従者だ。全てを手に入れて何一つ手に入れる事が出来なかった俺の、最後の光。

生まれながらに富も地位も名誉も簡単に手に入る才能と頭脳を持っていたし、容姿にも他人に持て囃される程度には整っている。万人が欲しいものを全て手に入れた俺は、からっぽの空洞そのものだった。普通の16歳の、普通の暮らしをしたかったのだ。学校生活を、友人とこうやって他愛のない会話を楽しんだり、恋を、してみたり。



「あの子は俺の宝物だから」

「……本人に言ってあげればいいのに」

「そんな事言ったら殴られちゃうじゃん、痛いのは嫌いなんだよ」



照れ隠しなら痛くても受け入れるけどね、と笑えば新羅は、勝手にしなよ、と呆れたように笑った。
そう、このままでいいんだ。今はまだ、このままで、青春とやらを謳歌していたいんだ。









鳥かごの中の自由
(楽しまなくちゃ)