・めだかボックス
・過去/庶務戦捏造
・もしも過去にショタ吉とショタ球磨が出会ってたら的な





昔話をしようか。
ああでも過ぎ去ってしまった事を思い出すだなんて時間の無駄かな。そもそも僕に語るほどの過去なんてモノは存在しなかったね。だって僕は最初から無価値で無意味で無関係で、何もない存在だったから。
世界には目標なんてないし人生には目的なんてない。それでも、そんな僕でにも唯一執着出来る存在があった。それが君だ。きっと君はそんなことはもう忘れてしまっている。あの時僕らが出会った事も、話をしたことも、僕が君に言えなかった言葉も全て無価値で無意味で、無関係だ。



「『ねえ善吉ちゃん』『善吉ちゃんは』『そんなにも』『僕の事嫌いなのかな?』」

「だっ…たら、なんだよ」



ガクガクと震えて、恐怖を隠せずに居る彼は、どこまでも普通の男子高校生だ。普通に普通な、少しお人好し過ぎるありふれた普通の男子高校生。異常(アブノーマル)の中に埋もれたそれはそれはあまりにも弱くて脆い、ただの普通の人間だった。

だけどそんな普通の人間が無価値で無意味な僕に小さな意味を与えた。空っぽの空洞みたいな僕に、邪気のない笑顔で、君が言ったんだ。



「『酷いよなぁ』『善吉ちゃんは』『簡単に忘れてさ。』『僕は未だに』『忘れられないのに』」

「中学の…、事、か…?」

「『ぶっぶー』『ハズレ』『そんな事じゃないよ』『なんだ本当に忘れてるんだー』『まぁ仕方ないよね』『普通の記憶力なんて』『そんな昔の事』『覚えてらんないよね』」

「……」



分からない、と言いたげに僕を睨む。
記憶力云々の話ではなくて、普通で普通な普通の君には何て事ない一言だったんだろう。でもそれが僕には酷く優しくて、残酷で、愛しくて、妬ましくて、恋しくて、こんなにも、囚われてしまった。


「『友達になろう』」

「?!」

「『ねえ善吉ちゃん』『僕と友達になってよ』『そしたら君の事』『助けてあげる』」



ねぇ、昔みたいに僕の手を取ってよ。
めだかちゃんじゃなくて、僕に笑いかけて欲しいんだ。なんて、君に言っても無駄な事くらい分かってる、分かってるけど。





無意味の意味を
(縋りたくなるんだ)