・弟臨也と兄静雄






確かに中学に上がってから弟とはあまり会話をしなくなったような気がする。それは弟を鬱陶しく思った訳ではない。むしろ逆だ、俺が弟に拒絶され始めたと思う。

弟は成績優秀で眉目秀麗と持て囃されるような良く出来た人間で、俺はと言えば成績も容姿も普通で、他人より力が強くキレやすい。簡潔に言えば不良にカテゴライズされる方の人間だったからそんな兄貴を邪険に扱うのは、俺が逆の立場なら同じことをするかもなとも何処か納得している自分が居た。


同じ屋根の下に暮らしながら会話は最小限で、少しだけよそよそしい空気になるのはお互いに思春期というかそういったものでもあるから仕方ない。生意気でムカつくけど大事な弟である事には変わりないと割り切っていたのに、…これはどういう事だ。


成績優秀・容姿端麗と言われる俺の弟、臨也はその本人からは到底想像できない……所謂オタク趣味を持っていた。




「…まぁ、俺は正直だから?としか言えないんだが…」

「だから、って………こういうの…おかしいと思わないの?」

「まぁ…こういうのは高いんじゃねぇのとは思うけど、自分で稼いだ金なら何に使っても文句言えねーだろうが」




シズちゃん、俺の兄貴は小さい頃から俺にとってのヒーローだった。強くてカッコよくてでも優しくて、テレビに出てくるヒーローよりもカッコよくて、憧れだった。特撮やロボットアニメとか、RPGゲームとか、所謂正義のヒーローの出てくる類いのモノにハマっていったのはきっとその、シズちゃんへの憧れが原因だったんではないかとも思っている。

一度ハマれば底無し沼のようにズルズルとハマっていく物で、段々そのジャンルを増やしながら広がって行く一方だった。趣味で情報を集めては売っていたので金には困らないし新しい情報を手に入れられる。俺は家族の誰にも気付かれる事なく自分の趣味に没頭していた。


そんな中で何となく、ネット上でネタにもなっていて気になったから興味本意で手を伸ばしたボーイズラブ、所謂男同士の恋愛物に酷く興奮した。そして俺が中学に入学した頃から何となく距離を置くようになって、今では必要最低限の会話しかしていない兄の事を思い出した。
シズちゃんは、どうやって自慰をしているんだろう。どんな声を漏らして、どんな顔をして絶頂を迎えるんだろう。もしも押し倒して組み敷いたら、どんな声で啼くんだろう。そしてお風呂上がりのシズちゃんを見て、自分の分身が反応した時に確信した。俺は兄を性的な目で見ていると。

最初こそこんな衝動に駆られた自分に嫌悪した。男同士、それも相手は実の兄だなんて。でもその内にそんな事も気にならなくなるくらいにその想いは募っていった。思えば俺は恋愛らしい恋愛をした事がなかったし、憧れは常に兄であるシズちゃんだった。ならばきっとあれが初恋で、俺の初恋はまだ続いてる、それだけだ。


だから俺はその初恋を実らせる為に、シズちゃんをここに呼んだんだ。



「シズちゃん、あのね―…」










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