仕事で久しぶりに池袋に来たし折角だから色々と散歩してから帰ろうと思えば、良く知る人影が見えた。

折原久瑠璃に折原舞流と、平和島静雄。


静雄を強い兄貴分として慕う彼女達と、何だかんだ言いながらも面倒を見る静雄はなかなか良い関係を築いていた。



「…なにしてんの」

「こっちの台詞だノミ蟲」

「あ!イザ兄久しぶりだねっ!」
「…兄…久…(臨也兄さん久しぶり)」


シズちゃんはいつものように嫌そうな顔をするが、二人が居るからか乱闘にはならない。そのかわり、彼の手にあったコーヒー缶が悲鳴を上げていた。


「久しぶり、何してんのこんな所で」

「これから道場だけど早く来すぎて」
「…時…潰…(時間潰しに付き合ってもらってたの)」


成る程ね、二人の暇潰しに付き合うだなんて、優しいんだねシズちゃん。その優しさを1mmで良いから俺にも向けて欲しいものだよね。


「じゃあ私達は行くね!静雄さん!」
「…話……(またお話ししようね)」

「ん、あぁ、稽古頑張れよ」

そのまま二人は座ったままの静雄に近付いき、左側に舞流、右側に久瑠璃が静雄を挟んで立つ。そしてそのまま――頬にキスをした。

ちゅっ、と軽いリップ音と、少し恥ずかしそうにしながらもそれを当然であるかのように受ける静雄。


「…は……?」

「イザ兄もばいばーいっ!」
「…兄……再…(臨也兄さんまたね)」


走り去る、妹達。
こちらを振り返り手を振る姿に微笑ましささえ感じる―っていやいやいや、そういう問題じゃない。

「…あいつら…こっちが手を出せないからって…好き勝手しやがって…、って言うか!シズちゃんもシズちゃんで何でやられっぱなしなのさ!もしかしてシズちゃんってロリコンだったの?!」

だから粟楠茜にもあんなにデレデレなの?!と捲し立てればシズちゃんは空になったコーヒーの缶を投げ付けてきた。
ちょっと待って豪速球。スチール缶が鉄の塊みたいに見える。間一髪で避けたら舌打ちが聞こえた。


「ふざけんな誰がロリコンだ。大体お前の家の挨拶なんだろーが……その、キス…とか」


恥ずかしいのか段々と声が小さくなるシズちゃん。何この子超可愛い!

そうか、つまりはあいつらが適当な事を言って言いくるめたって事か…本当に誰に似たんだろう。
でもこればかりは騙されるシズちゃんに問題がある、どう考えてもおかしいでしょ。何だよ家の挨拶って、いつから折原家はグローバルな家庭になったんだよ。


――いや、ならばこれを利用しない手はないな。



「…そうだね、これは家の挨拶だ。折原家の挨拶だ」

「は?」

「でも両頬はあいつらに取られたから、俺は唇を貰おうかな」

「――なっ…ん、うぅ…っ」


舌を入れて逃げる舌に絡み付けばそれだけでとろけて震えるシズちゃんの身体を引き寄せる。散々口の中を弄り倒してから離すと、酸素を求めて大きく息をし、睨み付ける。涙目で睨んでも可愛いだけなのにね。


久瑠璃、舞流、お前らはやっぱり俺の可愛い妹達だよ!




















似た者同士
(口実が欲しいだけ)