・モンハン的なサムシング
・アイルー(チート猫)臨也とハンターな静雄
・猫耳に猫しっぽなオトモアイルー臨也





ここ最近の寝覚めは最悪だ。
重たくて擽ったい、夢と現実の間をふわふわと行き来していると、ザラリとした感覚に一気に意識が覚醒する。



「………っ!」

「あ!おはようシズちゃん」

「何してんだてめえ」

「シズちゃん起きるの遅いからさ、何か寝顔見てたらムラムラしてきたから」



俺はイケブクロを拠点に付近に出現して街を荒らす奴等の狩りをしている。そしてこの人の寝込みを襲おうとしているクソ猫は、俺の狩りの手助けをするアイルーと呼ばれる猫。
ただそのアイルーたちは二本足で歩き人語を話すものの、外見は猫そのものだ。少なくとも、目の前でふざけた事を抜かすクソ猫みたいに人間に猫の耳としっぽが生えたようなアイルーは存在しないはずだった。


臨也以外は。
真っ赤な眼に黒い髪の毛。臨也はどう見ても黙っていればその辺にいる好青年だろう。ただこいつもれっきとしたアイルーで、その頭にはしっかりと猫の耳が生えている。
それなりに見目がいいからか、慣れたからか分からないがどうにか見ていれる物の、やっぱりシュールだ。
初めて会った時にはそういう趣味なのかと本気で思ったくらいだから。



「んー、だからお腹すいたからシズちゃん食べたいなって」

「死ねよ」

「じゃあ普通のご飯でいいよ」

「てめぇもアイルーなら飯くらい自分で作れ、この変態猫耳男」

「その言い様酷くない!?俺が居ないと狩りも出来ないくせに!」

「るせぇクソ猫!早く退け!重いんだよ!」



臨也の言葉は図星だった。
俺は人並み外れた怪力を持って、周りからは恐れられたりもしている。だが、俺は暴力は嫌いだ。街を守りたいしこの力を活かせるからとハンターにはなったが、俺は奴等を殺す事が出来なかった。
どうしても仕留める事が出来ない。そんな俺の変わりに臨也が仕留めている。たまに俺に向かって攻撃してきたりもするが。


でもそろそろあのバカ猫に思い知らせてやらなくちゃいけない。
チート猫だか何だか知らねえけど、俺だってこの仕事をして長い。一人でだって狩りくらい出来る。…と言うのは建前で、臨也がこの街に来たのは暇潰しで気まぐれらしいから、いつか臨也がココに飽きた時の為にもあいつに頼ってばかりはいられない。



置き手紙と昼飯だけ用意して朝早くに出発しよう。臨也は狩りがなければ昼まで寝てるだろうから。










多分性格に問題があるんだよ。と数少ない友人の闇医者は臨也の事をそう評した。
ただでさえ猫なのに猫じゃない臨也は他のアイルー達からは浮いていて、俺の事を化物扱いしたりするのは、きっと…寂しいからなんだろう。分かってる、分かってはいるんだが如何せんあのクソ猫は俺を怒らせるのが得意らしい。

暢気に考え事をしながらザクザクと道を進んでいく。そういえば、一人で狩りに行くのは何年振りだろうか。臨也に会ってから、俺は何だかんだ言いながら一緒に居たから。









「ありえない…」


起きれば家はもぬけの殻で、また畑に居るのかと思えばテーブルの上には昼ごはんとシズちゃんにしては珍しい書き置きがあった。
その書き置きを見て身体の芯から冷えていくような感覚に陥った。急いで集会所に行けばシズちゃんは朝早くから出掛けたと言われて脇目も振らずに走り出す。一人に決まっている。シズちゃんには俺以外に一緒に狩りに行くようなハンター仲間もアイルーも居ない。


この能力の高さも外見も、全てが俺を孤立させる道具でしかなくて、どっちにもなれない俺は、人並み外れた化物みたいな怪力を持っても誰かが隣に居るシズちゃんが羨ましかった。羨ましくて、妬ましくて、どうして俺と彼は同じ"異端"なのに、どうして。





「シズ、ちゃん…」

「どうだ…、みたかクソ猫」



ニヤリと笑うシズちゃんはそれが返り血なのか自分の血なのか分からないくらいに血塗れで、大量の屍が転がる中に座っていた。

それは、酷く無惨な光景。
だってシズちゃんはあんなに殺す事を嫌がって、躊躇っていたのに、どうして、どうしてだよ。そんなになってまで。
思い当たる節はある。シズちゃんが俺を要らなくなったから、だから。




「でも…やっぱり…」

「とりあえず、イケブクロに戻るから。傷が開くからあんまり喋らないで」



聞きたくない。もういらないなんて、言われたくない。さよならを言われるのが怖くて、シズちゃんを背負いながらもうこの街には居られないのか、と全身が冷えていく。新羅の家に届けたらあの家を出よう。用意してくれたお昼御飯、食べとけばよかったなぁ、シズちゃんのご飯は美味しいから好きだったんだよ。




「独りはつらかったんだ、な」



柔らかい声に振り返れば、血でぐちゃぐちゃなのにシズちゃんの笑顔は凄く優しくて綺麗で、堪え切れなかった感情が土を濡らした。



「…そうだね、でも」











君が居るから
(つらくないよ)