・捏造来神時代
これのちょっと前の話





図書室には似つかわしくない存在だと言うことは重々承知していた。現に俺がやってくると生徒達だけでなく司書の教員までもがそそくさと避難する。
それでいい、それでいいんだ。俺はただ平穏に過ごせる場所が欲しかっただけだから。

ただどの世界にも例外はあるようで、その例外はこの図書室にもあった。動じず俺の隣で本を読んでいるこの男だ。
俺たちはいつも隣に居るだけで、お互いにお互いの時間を過ごす。会話なんてない。
ただ、何故かその時間が何故か落ち着くというか、楽しみにしている自分が居るのも事実だった。



「何も聞かねえんだな。お前は」

「…聞いて欲しいのか?」

「いや、いい。別に、分かってんだろうから」



入学早々に軽トラに撥ねられても翌日には平気で登校出来る化物って事くらい。ゴールを振り回したりするような化物って事くらい。俺が化物って、事なんて。
分かってても隣に居てくれる人が欲しかった。こいつが隣に居るのが奇異でも、好奇心でも、利用しようとしてるからでも別に俺は失望したりはしない、もう慣れたから。



「勘違いしてるみたいだから一つ言っておくが、お前の事は名前と体が丈夫なヤツって事しか知らねえよ」



これから知ってければいいからな、と笑いながら頭を撫でてきた名前も学年も知らないこの男に、俺の心は一気にざわついた。


落ち着くのにざわめく。
この相反する気持が恋だと気付くまで、あと――…










穏やかに揺らめく
(それが心地良いんだ)