これのつづきみたいな





シズちゃんと、"友達"として話すようになって気付いた事。きっと本人は無意識なんだろうけどシズちゃんは俺の手の動きをよく見ている。そして何気ない動作…例えば、髪の毛を弄ったり、とかで手を上げたとき、シズちゃんは怯えたように構える。


最初こそ偶然だろうと思った。
でも何度も重ねていくうちに偶然なんかではなくて、シズちゃんは"覚えて"いるんだと気付いたら一気に怖くなった。あの時の事を、覚えているだなんて。



「……、確かに君がつけた静雄の外傷は全て治ったよ、でもさ」



君が一番分かっているんだろう?と訊いてくる新羅に俺は何も言えなくて。

心的外傷…、トラウマは深い深い根を張って今でもシズちゃんを侵蝕している。言わずもがな全て俺のせいで。
忘れる訳ない、あんな一方的な暴力を簡単に忘れられる訳ないのに。俺は忘れている事を望み、実際に忘れているように見えたシズちゃんに安堵した。


俺は…、最低だ。




「……」




帰りのHRが終わってもシズちゃんは机に突っ伏したまま寝ている。確か一人暮らしでバイトをいくつか掛け持ちしているみたいだから忙しいのだろう。罪悪感が一気に胸を締め付ける。


夕日を浴びた金色がとても綺麗で、孤高に生きるライオンみたいで、衝動的に触れたいと手を伸ばしたけど、やめた。

起こしてしまうかもしれない。また、怯えさせてしまうかもしれない。
行き場を無くした右手で頬杖をつきながら眠るシズちゃんを見詰める。




愛だと気付かずにそれを壊してしまったのが俺の罪なら、愛しい人に触れることが出来ないなんて俺に相応しい罰だ。


それでも、触れられなくてもこの手の届く距離に君に居て欲しい、側に居れるだけでそれだけで良いんだと、夕日に揺れる金色を眺めながら何度も自己暗示のように繰り返した言葉を思い出す。










多くは望みません
(君の幸せだけを)