ずっと手に入れたかったもの。
何よりも手に入れたくて、何年も何年も時間をかけてその時を待った。
初めは手駒にするはずだった、それが、いつの間にかそれだけじゃ足りなくなっていって、俺の思考を蝕んでいった。
……彼が、平和島静雄が欲しいと。
「シーズちゃん」
「…………っ、何だ…てめえか」
後から声をかけるとびくり、と震えた後、俺を確認すると彼にしては随分弱々しい悪態をついた。
可哀想なシズちゃん、ちょっと情報を弄って誤報を流してみただけなのに、すぐに疑われちゃって。きっと今日も覚えのない迫害にあったんだろうね、本当に可哀想。
今まで以上に畏怖され、嫌われてしまった可哀想な喧嘩人形、化物は。
「……臨也………」
「俺はシズちゃんの事、怖くないよ」
それは呪いの言葉。
寂しがり屋な怪物の心の隙間を埋める愛という名の重い呪詛。
池袋の人間達は今日も俺の生み出した虚像の「平和島静雄」に恐怖している。
本当の平和島静雄は、こんなにも小さくなって、声を殺して泣いているというのに、気付かない彼らが愚かなだけ。
「なぁ…殺してくれ」
「シズちゃん?」
「いっそ、殺してくれよ…っ!」
「どうしたの?また誰かに何か言われちゃったの?…おいで、慰めてあげる」
「やだ、いやだ…っ」
怯えていたから抱き締めてあげれば泣き出してしまった。あぁ、可哀想、可哀想なシズちゃん。あの街のみんなに怖がられて、嫌われて、独りぼっちな可哀想な化物。
でも安心して?そんな可哀想なシズちゃんには、俺が側に居てあげるから。
ずっと、愛してあげるからね。
幻影を操る
(君の虚像)
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