こうも暑い日が連日続けば春も梅雨も本当に来てたかどうかも忘れる。
暑い、とにかく暑い。
決してサボる訳じゃなくて、適度な水分補給がないとやってらんねえ。



「……あ」



あと10円、足りない。
いや、まぁ紙幣を崩せば良い話なんだが、生憎目の前のこいつにも手持ちの小銭はないらしい。釣り銭切れのランプがそう主張している。
畜生、苛々する。その苛々に任せて目の前のこいつを殴ってしまいたいけど、そんな訳にもいかず、


…ここから一番近いコンビニ、どこだったか…




ピッ、


ゴトン



「ほれ、これだろ?」



「え、いや、でもそれはトムさんのだから…ダメっすよ」

「……あー、うん。じゃあ間違えた。だからこれはお前にやんよ」



俺はこっちが飲みたいから、と別な缶を選択しながらもう一度手渡された缶は水滴を纏っているくらいに冷たくて、そんな冷えきった水分を身体に流し込んでも、俺の熱は何故か引かなかった。










120円の幸せ
(貴方の優しさ)





title:伽藍