俺は、人間が好きだ。
小さな事で悩み、もがき、そして時に思わぬ方向へと進化し続ける彼らが愛しい。これは歪であれ一つの愛なんだと俺は自負している。
だから俺の行動の根底は、純粋に彼らが好きなだけだからこそであって、……そこにあの化物は関係ない。俺が奴に劣等感を感じる部分なんて一つもないのに。
なら、何故。
「………コンプレックス、ね」
サイモンの言葉を思い出せば、乾いた笑いが込み上げてくる。
妖刀の彼女に向けた言葉だって、俺自身でさえも何が本当で何が嘘だか分からない…なんて。
…どうやら俺は、あの妹達とあまり代わらないのかもしれない。凄く不本意だけど。
「思春期の中学生じゃないんだからなぁ……」
シズちゃん、平和島静雄。
彼の持つ俺にはない、圧倒的な力。
自分を孤独にするほどに圧倒的な力を持ってなお、人間になりたいと願う滑稽な化物。俺の愛する人間達のカテゴリに彼は入れない。
俺はただの人間だから、アイツに勝つには真正面から直接行くだけじゃ駄目だって事はこの8年で学んだ。
それだから俺は裏から画策しているのに、アイツは、シズちゃんは、いつも馬鹿みたいに真正面から立ち向かって。
あの時、否定しなかった理由なんて本当はもう既に分かって居る。
俺は、奴を殺したいくらいに。
愛憎コンプレックス
(恐らく、愛してる)
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