・学パロ?
・とんでもない捏造




あの家で過ごした5年間の事はあまり、覚えていない。思い出そうとするといつも具合が悪くなるというか、身体全体が拒絶して、覚えているかも分からない。

旧家の跡取り息子の愛人の子ども、それがあの家での俺の立場だった事は辛うじて覚えている。

母親は5つの時に亡くなった。強くて優しい女性だった。あの人は母の事を愛していたから、反対を押し切って俺という荷物を受け入れようとしてくれた。


それは今となっては全て過去の話。
過去は順番に記憶の奥の方に押しやるもので、俺は世話になっていたあの家の名前さえも忘れてしまっていた。




「俺は折原臨也、よろしく」

「………平和島静雄だ」



何だろう、こいつは嫌だ。

友好的に話しかけてくるクラスメイトにそう思うのは失礼に値するが、ただ漠然とした嫌悪感…、恐怖感みたいなものがこいつを見ていると沸き上がってくる。



「静雄くんか…、じゃあ、シズちゃんとか?」


「!?」





―シズちゃんなんて、要らない

―生まれて来なければ良かったのに




ごめんなさい、ごめんなさい。
生まれてきて、ごめんなさい。




「……っ、」

「なんてね…、あれ?静雄くん?」


「う、あ…っ、ごめんなさ…っ、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ、あ、うあ、…っ」


「ごめんなさい、   」




俺を、許して。















「……本当に、忘れてられてた」



分かっては居たけど少しだけ堪えた。と告げれば握り締めた携帯電話の向こうからは「…程々にしなよ、すぐに行くから」と呆れたような声が帰ってくる。
電池が切れたように意識を失った彼を保健室に連れて行ったが養護教員は休みで、仕方がないので友人に連絡をした。


…彼がこの学校に入ることは知ってた。
彼がここに入学するから、俺はこの学校を選んだ。少しだけ先生を説得して、同じクラスにもなった。全ては、ただ一つだけの為に。



「シズちゃん……ごめんね」



全てを忘れたシズちゃんなら、やり直せるんじゃないかって、過去の自分がなかった事になるんじゃないかって、期待していた俺は最低な馬鹿でしかない。
幼かったからでは済まされない俺の罪は、彼を確実に蝕んで居ただなんて予想もしなかった、俺は。



―ごめんなさい、臨也さん



6年経ってもシズちゃんは変わらない。
背が延びて俺より大きくなったり、声が低くなったり、髪の毛を染めたりしているけど、そうじゃなくて。
全てに怯えて絶望した目も言葉も、昔向けられたものと何一つ変わらなくて、俺は改めて過去の自分の罪の重さを痛感した。










望んだ未来
(消えない過去)