・幽が微妙に性格悪い
・臨也が何か大人気ない
・シズちゃん出てこない






仕事まで時間があるからと新宿を歩いて居たら、見たことのある顔があった。向こうもすぐに俺に気づき、軽く会話を交わした。そしてとりあえず立ち話も何だし、と近くの喫茶店に入る事になった。

兄の天敵、折原臨也と。



「…ねぇ、幽君にとってのシズちゃんって何なの?」

「兄ですよ、尊敬する」

「ふぅん…」


まるで腹の探り合いのような会話。
この人の事はあまり好きではない。
元々、兄から伝わっていた情報であまり良い印象はなかった、寧ろ最悪。
そして初対面で、何が引っ掛かった。

折原臨也は、良くない。
底が知れない――奇妙な生き物に見えた。一般人から見れば俺達兄弟もそのカテゴリに入るのだろうが、この人は、俺達とも違う。


快楽主義者で愉快犯。
自分の楽しみの為ならば何でも利用する外道だ。



「じゃあ質問を変えよう。幽君さぁ、シズちゃんで抜いたことある?」

「…昼間から何て事を言うんですか」

「だから直接的な単語は控えたつもりなんだけどな?で、どうなの実際。君が兄であるシズちゃんに対して家族愛以上の感情を持ってるのはお見通しなんだよ」


軽い口調で笑っては居るが、目は冷めきっている。ああ、よく分かった。
最初から感じていたこの感情。それは同属嫌悪と言うものだ。この人は、そういう目で兄を見ている。恐らく、今までの嫌がらせも、言ってしまえば好きな子にちょっかい出す小学生のような物だろう。なかなか規模が違うが。


「…それについては黙秘しますが、兄貴に抜いてもらったことなら、ありますよ」

にこり、と笑顔を貼り付ける。
最大限に努力はしてみたが、それが他人に笑顔として認識される代物なのかは不明であるものの、目の前の男には効いたらしく、何やら赤くなったり青くなったりしている。


それでは、この後も仕事あるので、と言い席を立つ。相手には相当なダメージだったようで頭を抱えて居るが…どうしようか、この場の会計は俺が持とう、何かこの人に借りを作ったらまずい気がする。



会計を済ませて現場へ歩き出す。
きっと彼は今頃、ありもしない妄想に駆られて居るのだろう。俺は敢えて「何を」とは明言しなかった。それは至極簡単な言葉のあや。

あの人はそういう騙し合いには慣れていて、鋭いと思ったんだが…、想い人が絡むとああも簡単に引っ掛かるものなんだな。



携帯を取り出し、メールを送る。送信先は俺の尊敬する兄。


誰よりも優しくて、誰よりも強くて、誰よりも弱い兄。たった一人の俺の兄。

そう簡単に渡してなんかやるものか。



















ラスボスは俺
(勝てる気がしない!)